民間試算
2040年には720万へヘクタール
相続未登記などで所有者が分からなくなっている可能性のある土地について、その経済損失が年間1800億円にのぼるとの推計を、有識者でつくる所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也元総務相)がさきごろ発表した。年内にも政府に対策案を提言する。
研究会は、所有者不明の土地が2016年時点で九州より広い約410万ヘクタール達するとの推計を昨年6月に公表。所有者が分からないことで、公共事業のために取得する際に手間がかかったり、民間の都市開発の妨げになったりするなどさまざまな問題が起きている。
研究会では、土地を使えていた場合に得られた利益の試算額や所有者を探すことなどにかかる自治体職員の人件費などを使って経済損失を推計した。農地に活用できないことによる損失が342億円、公共事業の損失が209億円、宅地として使えなかった損失が118億円など。自治体職員の人件費も14億円以上が余計にかかるとしている。
今後も人口減少で土地の資産価値は下がる傾向が続き、相続しない人も増え続けると見込まれる。そのため、所有者不明土地は40年に北海道本島の面積に迫る約720万ヘクタールに達し、経済損失は年間約3100億円にのぼるとも推計した。40年までの累計では6兆円に及ぶという。
研究会では昨年12月に報告書をまとめ、相続放棄を減らしたり、土地を利用しやすくしたりする対策案を政府に提言する。すでに各省庁で検討も始まっており、国土交通省では民間企業やNPOなども公共的な目的を条件に活用できるようにする新制度をつくる方針をさきごろ決めた。
増田座長は「経済損失のかなりの部分が税金でまかなわれている。すべての土地所有者がわかる制度を目指すべきだ」と話している。