学生を対象とした国や自治体の留学支援が広がっている。経済協力開発機構(OECD)の統計によると、社会人を含む日本人の留学者数は平成16年の約8.3万人をピークに、26年は約5.8万人に減少。若者の内向き志向が指摘される中、助成金を充実させることで留学を考える学生の背中を押す狙いがある。
内向き志向打破へ・・・助成金充実
「留学の経験が将来を決める道筋になった」「夢と自信を持つことができた」_。さきごろ、東洋大白山キャンパス(東京都文京区)で、文部科学省が民間企業と協力して留学を支援する「トビタテ!留学JAPAN」の成果報告会が行われ、学生らが留学先で得た貴重な体験を披露した。
「トビタテ!」はグローバル人材の育成を目指し、留学機運を高める官民共同プロジェクトとして25年に始まった。民間の寄付を主な財源とする返済不要の留学支援制度で、応募に成績や語学力は不問。熱意や独自性を基準に寄付企業が選考し、毎年大学生1千人、高校生500人を海外に送り出している。
約11ヵ月間、フィリピンのNGOのインターシップに参加した東洋大3年の大野雛子さん(21)は、留学を通じて英語や現地語も話せるようになり「ソーシャルビジネスで貧困をなくしたい」という夢ができた。
「アジアなら留学のハードルは高くない。最初は旅行ででもいい。とにかく足を踏み入れて」と話す。
独立行政法人日本学生支援機構の調査では、大学生の海外留学は増加傾向にあるものの、長期留学者は伸び悩んでいる。高校生はテロなどの影響から、27年度の留学者数が前回調査から約6千人減少。留学を断念する理由は「準備が大変」「語学の壁」「経済的理由」などが多いという。
そこで国や自治体は、経済的課題を解決しながら、事前研修で準備をサポートする給付型奨学金の充実を図っている。国は28年度の予算を、24年度2.2倍に当たる約68億円に増加。東京都は24年度から都立高校の生徒200人に約10ヵ月の留学を支援しているほか、埼玉県も23年度から高校生と大学生を対象に20万~100万円の独自奨学金を交付するなど、留学支援を拡充した。
「トビタテ!」の担当者は「地方で生きるにも世界とは切り離せない時代。自分の常識が通用しない世界を見てから、進路を選んでほしい」と訴えている。