登記制度見直し
法務省が研究会
不動産登記の所有者が変更されず、長年放置されたまま「所有者不明」となっている土地の問題が深刻化しているとして、法務省は「登記制度・土地所有権の在り方に関する研究会」を昨年10月に発足させた。同省は問題の抜本的解決につなげる研究会と位置づけており、不動産登記法と民法の改正を視野に議論を進め、2019年までに報告書をとりまとめる。
土地の権利関係の登記は、相続などで所有者が変わっても名義を変更する義務はない。法務省によると、都市部の住宅地ではきちんと相続が登記されていることが多いが、資産価値の低い地方の山林や農地では登記が放置され、実際の所有者の特定が困難になっている。明治時代の所有者から変更されていないケースもあるという。
その結果、自治体の公共事業のための用地買収や、固定資産税の徴収などの際の支障になっている。11年の東日本大震災の被災地でも高台移転の際などに所有者を特定するのが難しく、自治体による用地取得や利用の足かせとなった。
研究会は大学教授や弁護士らの有識者で構成。土地の売買による所有者の移転に登記を不可欠とするか否か、相続登記の義務化、登記手続きの簡略化、所有権の放棄の可否、共有地の管理の在り方_などをテーマに議論する。
また、法務省は来年度から、自治体と連携して、公共事業などに支障を来す恐れのある土地を選び、不明になっている所有者の調査を始める。法務局の調査官が実際の所有者や法定相続人を割り出して登記を促すほか、法定相続人一覧図を作成して法務局に備え付け、自治体なども利用できるようにする。費用として来年度の概算要求に約24億円を計上している。
土地所有者不明問題を巡っては、増田寛也元総務相ら民間有識者でつくる研究会が昨年6月、所有者が分からなくなっている可能性のある土地の総面積が九州より広い約410万ヘクタールに達するとの推計を公表した。