東京都国分寺市は2017年度、自動車の運転免許証を自主返納した65歳以上の高齢者に同市のコミュニティーバスの無料パスを支給する。高齢ドライバーの返納後の移動手段を確保する。公共機関運賃を無期限で無料化する動きは地方でも例があるが、大都市圏の自治体では珍しい。
同市に65歳以上の市民は約2万6千人いるが、17年度当初予算にはまず千人の無料パス利用を見込んだ関連経費を計上した。市が交通空白地域などで運行するコミバス「国分寺市地域バス」(計6路線)の運賃(100円均一)を無料にする。
埼玉県内でも同様の動きは広がっている。日高市は免許を返納した高齢者にバス事業者の回数乗車券5000円分を交付。東松山市は16年度当初予算にデマンド交通の整備費として約4000万円を計上した。補正予算ではさらに2500万円を上乗せした。
東松山市のデマンド交通は、登録すれば市指定する乗降場所に運賃500円や1000円などの定額で行ける仕組み。登録者は昨年末までに当初見込みの約3倍となる1万4000人に達したという。免許返納した人に交付される運転経歴証明書を見せると、運賃が1割引きになる特典もある。
自家用車に乗らなくても暮らしやすいモデル地域づくりも進む。埼玉県はこのほど川越市をモデルとした「高齢運転者事故防止研究会」を立ち上げた。行政のほか、バスなど交通事業者が参加。免許証の自主返納を促す施策を検討するだけでなく、デマンド交通の導入なども検討する。川越は観光地や都市部、農地など市内の地域特性が多岐に及ぶことからモデルに選んだ。
地方に比べ公共交通網が発達した首都圏は運転免許証を返納しやすい環境にあるが、まだ緒に就いたばかりだ。企業や自治体は得点に工夫を凝らすことで高齢ドライバーの免許返納の後押しを進める。