国交省基準、圧迫程度2割減へ
エアバック普及→頭より胸に致命傷
車に乗車中の人が死亡する事故で、致命傷となる部位は近年、「頭部」よりも「胸部」が多くなっている。エアバッグの普及で頭部が守られている反面、シートベルトの締め付けの高齢者が耐えられないケースがあるためだ。国土交通省は、ベルトから胸にかかる圧力を下げるよう、基準を改める方針をきめた。
交通事故で乗車中の人が亡くなるけケースは年々、減少傾向にある。国交省によると、2004年の2918人から、15年には1499人に半減した。致命傷となった部位では、04年に約41%を占めた頭部が最も多かったが、エアバッグの普及もあり、15年には約30%まで下がった。
かわって致命傷部位で最多になったのが胸部だ。12年に頭部を上回り、15年には約35%を占めた。シートベルトは事故の衝撃がかかると強く締まって体を守る。その締め付けで骨折したり、内臓を損傷したりすることがあるという。
エアバッグがない時代は頭部がフロントガラスなどにぶつからないよう、強い締め付けが必要だった。しかし、エアバッグが普及し、近年の新車には標準装備されているため、頭部損傷が減少。シートベルトで強く締め付ける必要はなくなってきたため、国交省は性能基準を見直すことにした。具体的には、事故時の締め付けによる胸部の圧迫の程度を現行の8割まで低減し、衝撃時にも安全に体を守れるようにする。
国交省は今年、道路運送車両法に基づく規定を改定する意向で、輸入車も含めて、20年9月以降に発売される新型車を対象とする方針だ。担当者は「死傷事故をさらに減らすための変更」と説明している。