誰にもみとられることなく息を引きとり、一定期間、発見されない孤独死。高齢化、核家族化が進むなか、「ひとごとではない」と思う人が増えています。不安の声や体験談が寄せられる一方、「望むところだ」「よくないものとしてとらえるのはどうか」という声も。自分の望みどおりに死にたいと願う人は多いようです。
「孤独」に疑問の声も
孤独死を「ひとごとではない」と思う人は70%。周りに孤独死しそうな人が「いる」と答えた人も44%。体験談もたくさん寄せられた。
「母が亡くなってから、3日後に訪問して見つけた。ショックで、もっと蜜に連絡していたらと思った」(大阪、62歳男性)、「高齢者だけの問題ではない。30代独身の従業員が無断欠勤。3日続いたので、アパートの管理会社に連絡して部屋の鍵を開けたら、脳出血で亡くなっていた」(東京、59歳男性)。
都内では約10年で1.5倍に増えたといわれる孤独死。ただ、自治体で正確な実態はほとんど把握されていない。実は「孤独死」という言葉にも明確な定義はない。アンケートでもこんな声があがった。
「どこまでを孤独死というのか。子どもや友達がいてもみとられず、急のなくなる場合もある」(大阪、50歳女性)、「人は一人で生まれ、死んでいくもの。一人で死んだからといって孤独死というのはオカシイ。複数で死ぬのは心中ですよ」(京都、80歳男性)。
平成28年版「高齢社会白書」では、孤独死を「誰にもみとられることなく亡くなったあとに発見される死」としている。ただ国は、支援から漏れる人がないよう、定義をあえてしていない。
「おひとりさま」は増え、国は日本人男性の生涯未婚率(50歳までに一度も結婚したことがない人の割合)が、2035年で29%になると推定する。「孤独死対策は急務」が一般的な見方かと思ったが、アンケートではマイナスイメージにとらえることへの疑問の声が多く届いた。
「孤独死がいけないこととして取りあげられる理由がわからない。孤立を防ぐ社会的なつながりは、コミュニテイーで考えるべきだが、家で死にたい人もいるはずだ。孤独死が悪なら、高齢独居者でそのリスクの高い人は全員施設に入れないといけなくなる」(和歌山、53歳男性)、「孤独死は悪いことだろうか。みとられるから幸せだとは思えない」(大阪、63歳女性)。
「孤独」という表現に疑問を持つ人も多かった。
「社交的な人でも、一人暮らしをしていれば、死んで何日も発見されないことは十分ありうる。それを孤独死と表現してしまうと、人生の終わり方が孤独で寂しいものという印象を与えてしまう。もっと適切な表現はないものか」(神奈川、52歳女性)、「孤独死という言葉が悲惨なイメージをもたらしている。一人暮らしに慣れているので、一人で死ぬのは仕方ない。むしろ自由死と思いたい」(東京、67歳男性)。
「悩みのるつぼ」の回答者で社会科学者の上野千鶴子さんも、著書「おひとりさまの最期」で、一人暮らしでも、孤独でなければ孤独死ではない、「在宅ひとり死」と呼ぶことを提唱している。
ただ、孤独死は構わないが、発見が遅れるのは困るという人は少なくない。
「孤独死を不安に思う要素に、死後の後始末の問題がある。この問題がクリアできていれば、死の瞬間に一人で問題ないという人たちはいる。この問題をもっとオープンにして考えてもいいと思う」(東京、63歳男性)、「孤独死でいいが、後始末してもらえる公的システムが欲しい」(宮城、55歳女性)。
見回りや安否確認サービスを求める声は多かった。やはり思いどおりに死ぬためにも、生きている間にやるべきことはあるようだ。