1000億円超投資
海外本格展開も
「全線の集中改装は珍しい」。鉄道統括部の佐藤浩樹課長補佐は話す。きっかけは東日本大震災だった。震災直後は企業活動が萎縮したことなどから地下鉄利用者は前年に比べ1.1%減少。銀座線については老朽化を指摘する乗客もいるなか、社内では将来の利用動向に危機感が広がった。
同社はそれまで、駅の改良工事や車両の更新は単発で実施し、PR活動もその都度展開してきた。しかし、危機感を背景に「従来の手法ではインパクトがない。一気にやろう」という声が増えていった。
その結果、従来の手法を見直した全線改装プロジェクトが11年暮れから始まった。すでに銀座線の全240两の車両を更新。改装の時期を繰り上げた駅もある。総投資額は1000億円を超える規模となった。
東京メトロの足元の業績は好調に推移している。17年3月期の売上高は前の期比1.8%増の4154億円、純利益も7.9%増えた。通勤客などの需要が堅調なうえ、訪日外国人の利用も増加傾向にある。しかし、中長期で見れば少子高齢化などに伴う不安要因も少なくない。
世界最古の地下鉄が走るロンドンの運営事業者が東京メトロを視察した際には、ホームドアの設置やバリアフリー化の進展など、質の高い安全対策に大きな関心を持っていたという。東京メトロはすでにベトナム・ハノイ市で地下鉄の運営業務を担っている。今回の大規模修繕のノウハウを「輸出」する日もそう遠くないかもしれない。