国交省来年度実験
高齢者の移動手段に
国土交通省はタクシーに鉄道の「定期券」のような制度を導入する方針を決めた。利用地域や夜間、時間帯を限定し、定額で何度でも利用できるようにする。運転免許を返納した高齢者の足としての活用や、冷え込んでいるタクシーの需要喚起を図る。2018年度に実証実験を行い、19年度以降の実用化を目指す。
近年、高齢ドライバーの事故が多発し、高齢者に免許返納を促す動きが強まっている一方で、マイカーに代わる移動手段の確保が課題となっている。国交省としては、「タクシー定期券」を導入して1回あたりの利用料金を抑えることで、免許を返納した高齢者らに使いやすくし、通院や買い物などのニーズに応える狙いがある。学校や塾への子供の送迎や、仕事で限られたエリア内を頻繁に移動する人の利用も見込む。
タクシー運賃は道路運送法に基づくルールで地域ごとに細かく規制され、通常は乗車距離や時間に応じて加算される。国交省ははこのルールを一部改めるか、特例を設けて対応する方針。
金額は、運転手の減収にならないように配慮して今後定める。一台のタクシーを長い時間独り占めできないようにするなど、使い方のルールも検討していく。国交省の担当者は「都市部と地方の両方で役立つ制度にしたい」と話している。
国内のタクシーは、公共の交通機関で「一人負け」が続く。15年までの10年で見ると、鉄道とバスの利用者数はほぼ変わらないが、タクシーは3割以上減った。苦境を打破するため、新たな需要を掘り起こそうと、業界側からも定期券制度の導入を求める声が出ていた。