災害時限定規制緩和へ
政府は、東日本大震災などの災害時に深刻なガソリン不足が起きたことを踏まえ、災害時に限定して、ガソリンを運搬するタンクローリーから自動車に直接給油できるよう規制を緩和する。タンクローリーを「移動式ガソリンスタンド(GS)」として活用できるようにし被災地の早期復旧につなげる。
昨年9月上旬に兵庫県で実証実験を行い、安全性を確認した。消防庁が安全性を見極めた上で、年度内にも、全国の消防本部に通達を出す見通しだ。
ガソリンは引火しやすいため、消防法で、GS以外の給油が原則認められていない。静電気による引火などで大きな爆発を起こす危険性があるためだ。災害時もタンクローリーから乗用車などへの直接給油は認められておらず、ドラム缶に移し替えてポンプで給油するといった応急処置でしのいでいる。
ガソリンの給油方法については、近年、静電気の発生を防ぐ装置や、ガソリン漏れを防ぐ専用金具などの開発が進んでいる。政府も今年度予算で数千万の予算を確保し、装備の開発や安全対策を後押ししてきた。タンクローリーにこうした装置を付ければ、安全性が確保できると判断した。
東日本大震災で特に被害の大きかった岩手・宮城・福島3県では給油設備が損壊するなどし、一時、半分以上のGSが営業できない状態になった。被災地の住民の生活に欠かせない自動車が利用できなくなり、復旧を妨げた。2016年の熊本地震でも多くのGSで営業ができなくなった。
GSは災害時に燃料の供給拠点となる。しかし、全国のGSは15年度に約3万ヵ所と、この20年で半減。過疎地でのGS不足も問題になっている。今後南海トラフ地震などの大規模災害が起きた場合に、燃料供給体制を維持することが課題となっている。