「子どもの頃、親戚の人のえびフライにソースをかけてあげたら、しょうゆをかけるつもりだった、と。フライにしょうゆと聞いて衝撃を受けた」(東京、44歳女性)、「若い頃は天ぷらを天つゆで食べていたが、年を取ると塩や山椒で食べるのも、おいしいと感じるようになった」(東京、65歳男性)、「エビは高級食材だったが、家業が寿司屋だったため輸入冷凍エビが大量にあった。母がオヤジの許可を受けて月に2~3回、えびフライを食べきれるだけ揚げてくれた。トマトケチャップとマヨネーズを混ぜたソースが好きだった」(福岡、74歳男性)。
ものの本によると、ケチャップとマヨネーズを合わせた調味料を、日本では「オーロラソース」とよぶことがあるという。
天ぷらにせよ、フライにせよ、悩ましいのはエビの尾まで食べるべきか。アンケートのみなさんの回答も「食べる」が41%「食べない」が57%と割れている。
「エビのしっぽまで食べたいが、他人と食べる時には驚かれることが多い。外食では食べないことにしている」(岐阜、33歳女性)、「情報番組を見てカルシウム摂取のために良いと知ってから、無理に食べています」(大阪、68歳女性)。
東京・築地場外の「てんぷら黒川」の店主黒川丈史さん(58)に聞いてみた。
「尾は先端を落としてカリッと揚げてあるから食べられますよ」。厄介なのは、尾に一番近い部分を覆う殻だ。いささか硬い。ただ、このあたりの身は際立って味がよく、捨てるには惜しいという。
「この殻を初めから外したら、うまく揚がらない。硬い殻を自分でむいて食べているお客さんを見ると、この人は通だな、と思いますね」
徳島の女性(50)は亡き祖母の思いをつづる。
「一緒におそば屋さんに行くと、えび天のしっぽを剝いて、その中の小さい身まで綺麗に食べていた」
故人は、折り紙付きの通人です。