政府会議、定員抑制など提言
「時すでに遅し」地方大は効果疑問視
若者の東京一極集中に歯止めをかける具体策を検討してきた政府の「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」(座長・坂根正弘コマツ相談役)はさきごろ、東京23区内の大学の定員抑制などを求める提言をまとめた。政府は6月の骨太の方針に具体策を盛り込み、法規制も探るが、一極集中を是正する効果があるのか、疑問視する声が上がる。
東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県)への転入超過は21年続く。2016年は約11万8千人の超過者の8割超を15~24歳の若年層が占めた。都内の大学に通う学生は74万人超で全国の4分の1超。都内の大学の定員数は都内の進学者の約2倍だ。これに対し、長野や三重など13県では、高卒者が自県内の大学に進んだ割合が20%を下回る。
提言は、18歳人口の減少が見込まれる中、東京圏の大学の定員増が続いていることを問題視し、東京23区内の大学の定員増は認めるべきではない、とした。新たな学部を増設する場合、既存の学部を廃止するなどして、定員を増やさないよう求める。
地方へUターンする若者への支援策も盛り込んだ。地方で就職した場合の奨学金の返済免除、特定の地域で働き続けられる「限定社員」制度の導入、大企業による一部の本社機能の地方移転などを唱える。
提言について、明治大(東京)の担当者は「時代や社会のニーズに応じた学部の設置などが難しくなる」と話す。
一方、地方の私大は効果を疑問視する。都内の大学がここ数年続けてきた定員増はすでに一段落したからだ。福島県の私大の入試担当者は「規制を検討するなら、なぜここ数年で都内の定員増を決めたのか。時すでに遅しだ」と嘆く。新潟県の私大の事務局長は、都内の定員増による地方への影響はこれから出てくるとみており、「戦々恐々。国は私大の継続なんて眼中にないと思わざるを得ない」。
駿台教育研究所の石原賢一・進学情報事業部長は「定員を抑えても、東京の受験生が地方の大学をめざすようにはならない」と指摘。公務員採用で地方大学枠を設けるなど、よほど思い切ったことをしないと、東京から地方に流れることはないだろう」と話す。