消費者庁、滋賀・野州市に初提供
高齢者らの被害地域で防ぐ
消費者庁は、悪質な訪問販売や電話勧誘を行っていた業者が利用していた顧客名簿の情報を、滋賀県野州市に全国で初めて提供した。野州市は4月から、名簿に載っていた高齢者らを地域で重点的に見守り、悪質商法の被害を防ぐ取り組みを始める。
消費者庁が特定取引法に基づく調査で業者から入手した名簿で、過去に被害に遭った高齢者らの名前や住所などが記されている。こうした名簿は「カモリスト」と呼ばれ、業者間で出回っている。
これまで個人情報保護の関連法で国は自治体に原則、名簿情報を提供できなかった。そこで消費者安全法を改正し、昨年4月から高齢者らの見守り態勢を整えた自治体に対し、本人の同意なしに情報を提供できるようにした。
具体的には市町村などが消費者生活センター、社会福祉協議会、警察、介護サービス事業者など官民による協議会を設け、国に情報提供を要請。協議会はその情報をもとに見守り対象者のリストをつくり、ヘルパーらが自宅訪問した時などに様子を見る。個人情報保護の観点から関係者には秘密保持時義務があり、違反した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。
野州市(人口約5万人)は昨年10月に協議会を設置。消費者庁から今年1月、名簿に載っていた住民の情報提供を受けた。市は高齢者や障碍者の情報と照らし合わせ、見守り対象者を決める。地元警察とも協議し、対象者をつめていきたいといい、100人程度を見込んでいるという。
これまでに全国で31の自治体が協議会を設置。だが、個人情報流出の懸念などから、地域全体の消費トラブルの傾向を共有する程度にとどまる。一方、野州市は貧困者対策で以前から消費相談を担う部署などが連携を密にし、個人情報を共有できる態勢が整っており、全国に先駆けて名簿情報の活用に踏み切った。