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2017.04.14更新

違法残業是正

働き方、慣行切り替えるとき

 

 厚生労働省が長時間労働の是正に向けた緊急対策を公表した。有名無実化していた悪質な企業の社名公表ルールを強化し、違法な長時間労働の是正を促す仕組みを拡充した点では一歩前進だ。ただこれまでの対策は役所のアリバイづくりに終わっている面もある。対症療法だけでなく、成長につながる働き方改革を強力に進める必要がある。

 厚労省は長時間労働の是正を求める声が高まっているのを受け、社名の公表基準を厳しくしたうえで、企業幹部への直接指導や全社的な立ち入り調査に乗り出す構えだ。悪質な企業の取り締まりは必要だが、実効性を上げるのは容易でない。電通に限らず、労働時間を実際より少なく申請する企業は多い。慢性的な人手不足とされる労働基準監督署では目配り仕切れない面もある。

 いくら国が厳しい姿勢を見せても官主導の対策には限界がある。長時間労働の是正が進まない背景には、稼がねばならない企業の現実を国がとらえきれていない面がある。民間では時間ではなく、成果で従業員を評価する企業も増えている。そうした機運をとらえ、雇用慣行を切り替えるべきときではないか。

 高度な技術を持つ人材なら、評価基準を時間から成果に切り替えても、むしろ働く意欲は高まる。にもかかわらず、時間でなく成果で賃金を払う脱時間給制度を盛った法案は国会で棚ざらしのままだ。

 人口減で働き手が急速に減る日本では、一人でも多くの有能な人材を生かすのが成長への早道のはず。労使双方が納得ずくで成果を出す環境を整える。休息の確保など労使が守るべき新たなルールを明確に示すことこそ国がやるべきことだ。

 政府の働き方改革実現会議は今年以降、長時間労働の是正策を取り上げ、残業時間の上限規制などを検討課題とする方針だ。勢い余って市場の動きと逆行した形で規制の枠をはめるなら、企業の活力を引き出せず、働き手の就労意欲もそぎかねない。さじ加減を間違えると、日本の生産性は大きく低下する。

投稿者: 松村税務会計事務所

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