縮む内需個性アピール
新銘柄申請、今年42件で最多
コメの新ブランド開発競争が過熱している。地方自治体や企業が2017年から新たに作付け・収穫して販売する新ブランドの農林水産省への登録申請が過去最多の42銘柄にのぼった。コメの内需が減り続け、18年にも見込まれる生産調整(減反)廃止をにらみ、個性的で強力なブランドを育て、消費と農家の生産意欲を高める狙いがある。
食味などの魅力を高めた高級米として岩手県が申請した「金色(こんじき)の風」はふんわりとした触感が特徴。冷めても粘り気がある。達増拓也知事は「(販売価格で)トップ5を目指す」と認知度向上をめざす。
宮城県は県として26年ぶりの大型ブランドに育てようと、東北201号(販売時の名称は未定)を申請した。福井県が申請した越南291号は3月にもブランド名を決める方針だ。
企業を中心に需要が拡大する外食産業向け新銘柄開発も目立つ。豊田通商は既存品種より3~5割の収穫増が見込める品種を申請。「しきゆたか」の名称で販売する。
住友化学も収穫量が多いコメの新品種を申請した。コンビニエンスストアで販売する弁当などでの消費を想定する。種苗販売のトオツカ種苗園芸(滋賀県草津市)は米粒がコシヒカリより3割大きい新品種を開発した。
農産物検疫法に基づくコメの銘柄登録制度は1969年に始まった。主食用の銘柄数は現在、726銘柄。新興ブランドでは北海道産「ゆめぴりか」などが人気だ。ブランド米の代表格である新潟産コシヒカリは東京都内での店頭で5キロ入り2000円前後なのに対し、ゆめぴりかは新潟産コシヒカリより200~300円ほど高い。現在は小売店に並ぶコメはほとんどがブランド米だ。
農水省への申請は09年以降、増加基調が続く。最多だった16年は高級路線を志向する新潟産のブランド米「新之助(しんのすけ)」など32銘柄が新顔として誕生した。新之助は東京都や京都市の百貨店で5キロ3780円の高菜で売り出した。
主食用のコメは15年度、744万2千トンの年間生産量に対し、内需が766万2千トン。農水省の家畜飼料向けへの転作誘導政策の影響で需要のほうが多いが、消費量は毎年8万トンペースで減っている。高齢化や家庭での米食の減少がある。コメが値下がりすると米農家の離農が加速する懸念もある。新ブランドは限られた小売店の売り場で常時販売してもらえる知名度を獲得するため、各産地とも大がかりな販促を計画している。