一人前調味料売れ行き好調
増加する若者や高齢者の単身世帯を狙った「おひとりさま」商戦が熱を帯びている。食品メーカーは家族向けが多かった鍋の調味料などで一人向け用商品を相次いで発売。外食でも同様の動きが広がりつつある。少子高齢化で国内市場の拡大が見込めない中、生活様式の多様化に細かく対応することで、販売増につなげたいとの思惑がある。
食品メーカーで目立つのが一人用の鍋の調味料だ。これまで家族向けの大容量商品が多かったが、エバラ食品工業は一人前分の濃縮液体調味料「プチッと鍋」の販売に注力。昨年1月には栃木県の工場に専用の生産ラインを新設した。シリーズ全体の2016年度の売り上げ目標に、前年度比3割増の35億円を掲げる。味の素も一人前分の固形型調味料「鍋キューブ」が好調だ。昨年8月から一人前ずつ包装した鍋つゆ「こなべっち」シリーズを発売したミツカンは「単身世帯を中心に人気が高く、売れ行きは計画を上回っている」(広報)という。
鍋の調味料以外では、永谷園が昨年8月、三人前からだった主力商品「麻婆春雨」シリーズに、電子レンジで温めれば食べられる一人前用商品を投入した。キューピーでは、ゆで卵一個とポテトサラダなどを一緒にパウチ容器に入れた1~2人前のチルドサラダ「つぶしておいしいサラダ」シリーズや、一人前用の「あえるパスタソース」シリーズの販売が順調だという。
「おひとりさま」を狙った動きは、食品メーカー以外にも広がる。インターネット通販大手のアマゾンジャパンは正月に向け、1~2人前向けの「個食おせち」のラインアップを拡大した。昨昨年は14種類だったが好調なため、昨年は24種類に増やした。外食でも宅配ピザチェーン「ピザハット」が昨年11月19日に宅配サービスだけでなく、イートイン対応店舗を千葉県にオープンした。「一人での来店も想定し、一人用の席を準備したほか、小型で低価格なピザなど一人向け商品もそろえた」(担当者)
厚生労働省によると、15年の単身世帯は1351万世帯で04年(1081万世帯)から2割以上も増加した。若者の晩婚化や、核家族化で高齢者のみの単身世帯が増えているためだ。今後も単身世帯の増加傾向が続くとみられ、「おひとりさま」を意識した各社の知恵比べが続きそうだ。