景観整備国が補助
五輪向け外国人誘客
政府は、2020年の東京五輪・パラリンピックに合わせ、地方の観光地の景観を整備する方針をかためた。対象として想定しているのは、城下町や宿場町など日本らしい魅力を海外に発信できる観光スポットで、外国人観光客を地方に呼び込む狙いがある。海外での知名度からいえばあまり知られていない「1.5流」の観光地を掘り起こし、京都のような「一流」の名所に育てることを目指す。
国土交通省が17年度から、景観整備を行う市町村に対する補助事業として行う。今冬にも公募を通じて、全国10~20ヵ所の「観光景観モデル地区」を指定。17年度予算に30億円を計上し、事業規模は17~19年度の3年間で計90億円としたい考えだ。自治体には、年1~2億円の補助金を支給することで調整している。
具体的な整備事業は、外国人観光客が好むような歴史的な景観の魅力を高める狙いから、1 歩道の石畳化、2 景観を損ねる広告の撤去、3 ガス灯の設置、4 案内板や標識の交換_などを検討している。
政府は20年に訪日外国人を年間4000万人に増やす計画を立てている。ただし、五輪に合わせ増加が見込まれる外国人観光客は、交通の便が良い東京や大阪、京都、札幌など一部の都市圏に集中し、現在のところ地方までなかなか足を運んでいないのが実情だ。
政府関係者は「地方にうずもれた1.5流の観光地であっても、磨きをかければ、海外でも名の通った一流の観光名所として人気を得る可能性は十分ある」と語る。日本らしさをたたえる地方の観光を五輪のレガシー(遺産)と位置付け、投資する考えもある。
財政難に苦しむ地方の観光地には、景観整備に加え、広報・宣伝にも手が回らず、海外の知名度が今一つのところが少なくない。外国人観光客の誘致拡大を目指す青森県弘前市、福井県大野市など複数の市町村が国交省に対応を相談してきた。
弘前市では、10年に3620人だった外国人宿泊客が15年には9035人と2.5倍に増えたが、今後、さらに増加できる素地があるとみられている。弘前市は観光スポットの弘前城の周辺に広がる寺院街の歩道改修を進めるため、モデル地区に名乗りを上げる構えだ。担当者は「国内で弘前の名は知られていても、世界的にほぼ無名。歴史を感じさせる景観づくりを進めたい」と話している。