16年度見通し
大震災教訓、各地で備え
携帯電話の普及で減り続けた板公衆電話回線が、2016年度は26年ぶりに前年度比で増加する見通しとなったことがさきごろ分かった。東日本大震災などを教訓に、災害時に備えて回線だけをあらかじめ引いておく「特設公衆電話」の導入が各地で進んでいることが背景にある。
従来の一般公衆電話は、ピーク時の1984年度には約93万5000回線設置されていたが、91年度以降は減り続け、15年度には約17万1000回戦と2割以下まで落ち込んだ。16年度も採算割れの公衆電話の撤去が進み、約16万3000回戦となる見通しだ。
一方で伸びているのが災害時に避難所などに置かれる特設公衆電話だ。無料でかけられ、停電時でも使えるのが特徴。通話が殺到し、通信規制がかかる固定電話や携帯電話より優先される設計で、家族の安否確認や支援を求める緊急連絡など被災者の重要な通信手段となる。普段は使われず、災害時に準備している電話機をつなげ、使うしくみだ。
11年の東日本大震災では岩手、宮城、福島などに、同年9月に紀伊半島を襲った台風12号では三重、奈良、和歌山の各県に設置された。
ただ、災害の規模が大きくなると、道路が不通となるなど、災害が起きてからの設置は難しくなる。このためNTT東日本、西日本はあらかじめ回線を引いて、いつでも使えるようにしておく方針を打ち出し、自治体などと協議を進めてきた。
こうした「事前設置型」は、東日本大震災の翌年の12年ごろから本格的に広がり、15年度には前年度から約8000回線増えて全国で5万回線近くになった。16年度もNTT東西が順次設置を進めており、一般型の減少分を補って公衆電話全体で増加に転じる見込みだ。
学校などの避難所のほか、帰宅困難者向けなどにセブンーイレブン・ジャパンが東京都内の店舗に導入している。NTT東の担当者は「災害時の通信手段を確保するため事前設置の必要性を浸透させていく」と話す。