浅草の車夫3人
「20年五輪アピールしたい」
東京・浅草で人力車を引く車夫3人がさきごろ、世界一周に出発した。。約3年かけて五大陸を回る計画で、「日本を訪れる機会のない人に日本の文化や2020年の東京五輪・パラリンピック開催をアピールしたい」と意気込んでいる。
世界一周に挑むのは、京都出身で、現在は浅草に住む鈴木悠司さん(26)と、同僚の平野謙さん(26)、高橋佳輔さん(25)。
発案者は鈴木さんだ。大学を卒業した2013年春、世界一周を夢見て、資金集めのために上京した。同年6月に浅草で始めた車夫の仕事が面白く、人力車を引きながら世界一周することを思い立った。
鈴木さんが旅に魅せられたのは大阪学院大(大阪府吹田市)に通っていた3年生の夏休みのこと。小学校から目指してきたプロのサッカー選手を、けがが重なって断念することになり、心に区切りをつけるため、単身でブラジルに渡った。渡航先のクラブチームでサッカーをしながら約1ヵ月半過ごすうちに、「日本の外には自分が知らない世界があるんだ」と気づいたという。
翌年には、東日本大震災の被災地に世界各国の人が折った折り鶴を届けるプロジェクトを計画し、2か月かけてヨーロッパを回った経験もある。
今回の世界一周計画では、9月5日正午に浅草を出発し、高齢者施設などを訪問しながら約2ヵ月かけて人力車で、大阪まで移動。11月1日に大阪から中国・上海に向けてフェリーで出国する。ベトナムなど東南アジア各国を経由し、インドに向かう。人力車を引きながら文化交流イベントに参加したり観光地で日本の文化を説明したりする予定だ。
約1年かけてアジアを回った後、いったん帰国し、その後はヨーロッパやアフリカ、アメリカ大陸、オーストラリアも回る計画だ。
鈴木さんは1人で人力車をひき続けるのは難しいと考え、仲間を募ったところ平野さんと高橋さんが応じた。人力車を船で輸送する費用約200万円は、インターネット上で出資者を募る「クラウドファンディング」で集めた。
渡航代や宿泊費などは各自の貯金で賄うといい、節約のため、テントや寝袋も持参する。「時間もお金もかかって大変だが、世界中の人に出会えると思うとわくわくする。日本文化の魅力と4年後に東京五輪が開催されることを多くの人にアピールしたい」と鈴木さんは目を輝かせた。