出版業界に影響予想
インターネット通販大手のアマゾンジャパンは8月3日から、電子書籍の定額読み放題サービス「キンドルアンリミテッド」を始めた。同社によると、月額980円(税込み)で、池井戸潤さん、石田衣良さんら著名作家の小説をはじめ、書籍や漫画、雑誌など和書12万冊、洋書120万冊以上が読めるようになる。ネット書店大手である同社の参入は、出版界全体に大きな影響を与えそうだ。
同サービスは、2014年7月に米国で始まり、英、独、インドに続き、日本は世界12ヵ国目。電子書籍専用端末「キンドル」やスマートフォン、タブレット端末などで利用できる。講談社や小学館、文芸春秋など多くの出版社が出版物を提供。手塚治虫さんの「ブラック・ジャック」や若杉公徳さんの「デトロイト・メタル・シティ」など新旧の人気漫画のほか、女性誌「VIVI」、「ニューズウィーク日本版」など240誌以上の雑誌も読めるようになる。
出版科学研究所によると、昨年の電子出版の推定販売金額は1502億円で、前年比31.3%増。複数の事業者が読み放題サービスを始めており、NTTドコモの「Dマガジン」は、14年の開始以降、契約が325万件に上っている。
アマゾンジャパンによると、米国では定額読み放題サービスの会員は、サービス利用費を含む電子出版物の購入費と読書時間が3割伸びたといい、同社は「読み放題で会員が読むと本のランキングにも反映され、それを見た一般利用者の購入も促進される」とする。
一方、出版ニュース社の清田義昭代表は、「一定の利便性はあるが、読み放題サービスは街の書店の経営を圧迫し、出版社にも影響が出るだろう。出版界全体に何を与えるか見守る必要がある」と話す。