こんにちは北区王子の税理士松村憲です。
銀行が個性的な店舗づくりを競い始めた。インターネット取引の普及や異業種の参入で環境が一変し、画一的な店舗では年齢層や地域によって異なる顧客ニーズをつかめないからだ。顧客目線を意識した「サービス業」への転換を探る銀行店舗の現場を調べた。
商業施設と一体化
5月に大阪府の京阪枚方市駅前に開業した複合商業施設「枚方T-SITE」。エスカレーターで7階のりそな銀行枚方支店には、従来の銀行店舗とは全く異なる光景が広がる。店内は約1000冊の本に囲まれており、広々とした明るい待合スペースが解放感を演出する。
りそな銀行は施設を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の誘いで、近くの支店を移転した。「本屋の中にある銀行」がテーマの新店舗は、落ち着いて資産運用の相談などができるように配置を工夫。買い物客が銀行の顧客なる効果も見込む。
「ゆったりして過ごしやすい」{主婦、33)、「来店時に身構えなくていい」(会社役員、40)など、評判は上々。りそなホールディングスの東和浩社長は「入りやすい店づくりに挑戦する」と意欲を見せる。
フィンテック体験
将来の銀行店舗を見据え、IT(情報技術)を活用した新たな金融サービス「フインテック」の実験店に位置づけられているのが、5月に東京駅前に移転開業したみずほ銀行八重洲口支店だ。
例えば、壁面のタッチパネルを押し、住宅ローンなどの金融商品のパンフレットを自分のスマートフォンに取り込むサービス。利用した女性会社員(23)は「遊び心をくすぐられる」と話す。みずほ銀の清水英嗣執行役員は体験型の店舗をつくった狙いを「会社員や学生との金融取引のきっかけづくり」と説明する。
過疎地は移動店舗
人口が減る地域ならではの「出店」もある。静岡銀行は5月にトラックの荷台を改造した移動店舗の運用を始めた。入り口にATMを1台置き、行員2人が簡易窓口で口座開設手続きや融資相談に対応。週に3~4日静岡県内を巡回する。
毎週木曜日に営業する西伊豆町の田子地区は過疎化が深刻で、昨年秋に店舗を閉めた。住民は車で数十分かかる別の店舗を使っていただけに店舗の「復活」を歓迎する。静岡銀の内山将希氏は「採算は厳しいが、継続的にサービスを提供して地方銀行の使命を果たす」と話す。同様の取り組みは大垣共立銀行が先駆け。常陽銀行なども展開し、地銀の新たな店舗戦略になっている。