高齢化農薬散布が安く楽に
農薬の散布など農業分野での小型無人機「ドローン」の活用に関心が高まっている。農林水産省は指導方針に安全な飛行や正しい農薬散布を行うための、ドローンの取り扱いに関する内容を追加した。農家の高齢化が進む中、関係者は「農業の効率化につながれば」と期待を寄せる。
「ゆっくり前に進めて」。6月下旬、群馬県高崎市で開かれた、ドローンメーカー主催の講習会。コメ農家ら12人が参加し、水田に見立てたスペースで、機体を一定の高さに保つ訓練などをしていた。新潟県上越市から参加した福原弥さん(52)は、約60ヘクタールの水田でコメなどを栽培している。これまで、真夏に10キログラムを超える噴霧器を背負って農薬をまいてきた。「体力的にきつかった。この夏から早速、ドローンを散布に使いたい」と顔をほころばせた。
農家からの要望を受け、農水省は今回、ドローンの特徴を踏まえた操作上の注意事項を指針に追加した。
例えば、これまで空中からの農薬散布で使われてきた無人ヘリに比べ小回りが利くが、下向きに発生する気流が小さく、噴射した農薬が周辺に飛散する恐れがある。そこで、指針では、ドローンの推奨する飛行高度を無人ヘリの半分程度の2メートルとした。機体が小さいことも考慮し、目視で機体を確認できるように、操縦者から機体までの距離も、無人ヘリの3分の1の最大50メートルと定めた。
ドローンは特に、中山間地などの生産性の向上につながると期待されている。
農水省によると、無人ヘリが農薬を散布した面積は2014年度、延べ約105万ヘクタールに上ったが、活用されているのは平野部が中心。ヘリは1度の飛行で農薬を2~3ヘクタールに散布できるが、1機約1000万~1300万円と高価だ。
一方、ドローンは1度の飛行で農薬を散布できる面積は約1ヘクタールにとどまるが、価格は1機約200万~260万円と大幅に安い。機体も小さく、狭い水田での運用も見込めるという。
15年2月時点の農業就業人口は約210万人で5年前に比べて19.5%減少。就業者の平均年齢も66.4歳と過去最高となった。教習を主催するメーカーは、若い世代だけでなく、高齢者からも問い合わせが相次いでいるという。農水省植物防疫課は「ドローンの普及で、農作業の省力化につながれば」と話している。