熊本地震で影響を受けた九州の観光を支援するため、観光庁が九州7県に旅行費用を助成する「九州ふっこう割」とよばれる商品が人気を呼んでいる。7~9月に熊本、大分両県を訪れると最大で7割引きになり、旅行会社が7月1日に発表したところ、「既に売り切れたプランもある」という。しかし、割引終了後の誘客が課題となりそうだ。
政府が地震などの震災復興で自治体に旅行補助の交付金を支給するのは初めて。観光庁は地元の要請を受け、観光支援の割引費用として、2016年度補正予算に盛り込まれた熊本地震復の復旧予備費から180億円を九州7県に助成することを決めた。各県と「九州観光推進機構」(7県と地元経済界などで組織)から販売を委託された旅行会社が交付金を受け、九州への割引旅行商品を店頭やインターネットで販売する。
「九州ふっこう割」の売れ行きは好調だ。近畿日本ツーリストは新大阪から新幹線で長崎県のハウステンボスを訪れるプランなどをインターネットで受け付けている。日本旅行は「発売初日の1日はホームページのサーバーが一時ダウンするほどアクセスが殺到した。人気が高く、既に売り切れの商品も相次いでいる」という。7月5日には東京都内で九州観光のPRが行われ、くまモンらゆるキャラが地元の魅力をアピールした。
好調な出足について、九州観光推進機構事業本部の村岡修治副本部長は、「予想以上の反応だ。夏休みを九州で過ごそうと考えていた旅行者の背中を、交付金が後押しする形になっている」と手応えを語る。
観光庁によると、九州では熊本地震後に宿泊などのキャンセルが相次ぎ5月のゴールデンウィークまでに75万人分のキャンセルがあった。この状況が続くと最大で1700億円分の経済的損失が出るという。
三菱総合研究所の宮崎俊哉主席研究員は「観光客は夏よりも冬が少なくなる。交付金の投入時期やエリアを工夫した方がさらに持続的な効果があったかもしれない」と語る。