生協の父「賀川豊彦生」創設
大正・昭和の社会運動家で日本生活協同組合連合会(日本生協連)の初代会長を務め、「生協の父」と呼ばれた賀川豊彦(1888~1960)の名を冠した「賀川豊彦賞」が創設された。地域で格差や貧困の解消に取り組んでいる活動に光を当てるもので、解散した生協から寄贈された財産を手元にしている。
賀川は労働運動や農民運動、平和運動のほか、保育や教育にも携わり、ノーベル文学賞や平和賞の候補にもなった。賀川豊彦賞を創設した公益財団法人賀川事業団雲柱者(東京都世田谷区)は、賀川が福祉や協同組合の活動を支えるために立ち上げた団体を前身とする。
この財団が運営する賀川豊彦記念松沢資料館には、格差や貧困の問題に取り組み、助け合いを重んじた賀川の活動を紹介する展示品が並ぶ。杉浦秀典・副館長(51)は「賀川は、人が横につながって背活を改善していく仕組みづくりをめざしていた」と話す。
こうした賀川の志を継ぎ、発展させようとしたのが今回創設した賞だ。格差や貧困の問題が深刻化している今だからこそ、既存の福祉が届かない「隙間」に手をさしのべているような活動を励ます狙いがあるという。
賞金は100万円。その費用は、賀川の指導で1947年に設立された松沢生協からの寄贈財産で賄う。松沢生協は賀川の地元世田谷にあり、多い時には500~600人の組合員がいた。だが、高齢化と組合員数の減少により、2014年に活動の幕を閉じた。解散時は40人ほどで、平均年齢は80歳を超えていた。
財団が寄贈を受けたのは、不動産や現金計約1億5千万円。解散時の専務理事だった伊藤秀朗さん(86)は「日本に生協を導入したのは賀川先生。先生のところにお返ししてお役に立てたら、と総会で決めた」と語る。生前の賀川と直接交流があり、その人柄を「誰でも包み込むような包容力のある人だった」と振り返る。
財団のホームページはzaidan.unchusha.com