証券10社、4月末時点で4万口座
引き出し制限などで敬遠
4月に始まった未成年者向けの少額投資非課税制度(ジュニアNISA)の滑り出しが低調だ。子や孫の教育資金づくりや財産供与の新手法として証券業界の期待は高いが、主要10社の口座数は4月末時点で4万強。年明け以降の株安に加え、成人向けNISAに比べ煩雑な手続きや資金の引き出しに制限が付くことなどが敬遠されている。
ジュニアNISAは親や祖父母が未成年者に代わって株式や投資信託に投資すると、5年間は売却益や配当に税金がかからない。最大80万円の投資額まで適用される。
日本証券業協会がさきごろに発表したジュニアNISA(4月時点)は、主要10社合計で4万1707口座。ジュニアNISAの対象は0~19歳の2200万人と、成人向け(20歳以上、1億5000万人)に比べて規模が小さいが「それを考慮しても(口座開設は)かなり少ない」(日証協の稲野和利会長)。
証券業界全体でも普及は道半ばだ。10社が成人向けで持っているシェアは5割弱。仮にジュニアNISAでも同じ程度とすると、4月末時点の総口座数は10万に達しない可能性がある。
教育資金などの受け皿として期待されながらも、年明け以降の株安で個人の投資心理は冷え込んでいる。さらに3つの課題も浮かび上がる。
一つは資金の引き出しについて制限が課されていることだ。成人向けがいつでも引き出せるのに対し、ジュニアNISAは株式を売却しても、子どもが18歳になるまで原則として引き出せない。教育資金など中長期で増やすための措置だが、かえって利便性が劣ると感じる投資家もいる。
手続きの煩雑さも指摘されている。ジュニアNISAは本人確認書類に加え、親子関係を証明する戸籍謄本なども必要になる。
さらに、今年1月から証券口座全般の開設には税と社会保障の共通番号(マイナンバー)が必要になった。抵抗を感じる投資家もおり、「1月には口座開設数が落ち込んだ」(日証協)という。
日証協は今後、税制改正要望などに併せてNISA全般の「非課税期間の恒久化や、事務手続きの簡素化などを積極的に訴えていきたい」(稲野会長)としている。