「男子校」と言う病に、青春時代の私は取りつかれていました。男子高校にいた間、女子とのふれあいを、ひたすら妄想するうち、彼女たちは聖女のごとく、平常心では近づきがたい存在にになってしまいました。あれから40余年。共学校だったら、バラ色にときめく学園生活だったかも知れないと、いまだに煩悩を断ち切れません。
男子校から独身人生
禁欲の戒律を課せられた修行のような人生が、手ぐすねひいて待ちかまえている。
機械メーカーに勤める、東京の50代の男性は、高校受験でそんな予感にとらわれ、人知れず重い悩んだという。
偏差値は、トップクラスの進学校だった私立男子校の合格圏内にあったのに、ランクを落として公立の共学校を第一志望にしたかったのだ。「人見知りで趣味は電子工作。そんな自分の性格を考えると、男子校に進めば、その先、異性と縁がなくなる不安に駆られたんです。せめて同じ教室にいれば、チャンスがある。その願望は親にも打ち明けられなかった」
親と教師の期待にこたえて私立男子校に合格。大学は工学部に入ったが、そこでも女子学生は影も形もなかった。
女性とは心底から打ちとけた会話ができないまま時がたち、いまだ独身という。結果的に予感は的中したのだ。
思春期の男子だけが群れつどう学校は、悶々とした哀愁が漂う。男子校の工業学校を卒業した神奈川の男性(58)は、「教室に和気あいあいとした雰囲気など微塵もなく、異性の目がないから身だしなみもお構いなし、いつしか母親が理想の女性像になっていました」と思い起こす。
今回のアンケートで、別学は大差で退けられた。最多の理由は、社会のあるべき姿を反映していないからだ。
その点では男子校と同類の女子校にも暗黒面があるようだ。「中学から大学までエスカレーターの女子校だった。卒業後、妻子ある男との不倫に走る同級生が5本の指では足りないほどいた。男の言葉の裏側に潜む自己中な思惑を見抜けず、だまされやすかった」(神奈川、58歳女性)
男女が授業は別々、部活などで交ざりあう「男女併学」もある。共学と別学の「いいとこどり」とうたわれるが、アンケートでは不評だった。
別学はもはや、時代錯誤なのか。わずかな根強い支持者は、こんな取りえを挙げる。
「異性を意識すると言いたいことも言えなくなるから、別学の方が気楽。同級生との友情や連帯感も深まる」(福岡、66歳男性)、「女性の自立を教える中高一貫女子校で学び、力仕事や役職も率先してこなした。男にしなだれかからずに生きていける自身がついた」(東京、30歳女性)。
3年ぐらいなら、男子校の居心地も、それほど悪いもんじゃない。じつは私も、そう思う。
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