KDDIがコンセプトモデル
KDDI(AU)がスマートフォン(スマホ)の「次」を模索している。これまで携帯電話会社の収益をけん引してきたスマホの成長が普及により鈍化、今後も大きな成長が期待しづらいためだ。無線通信網と運営のノウハウを武器に新たな基幹製品や中核ユーザーを開拓しようとしている。そのひとつが、これまで手つかずだった親子向けの商品だ。
おままごと次世代版
KDDIはさきごろ、次世代のおままごとキット「ままデジ」を開発した。キット内の引き出しやまな板に設置したセンサーがタブレット(多機能携帯端末)と連動し、料理の手順にしたがって野菜を切る音や湯気を出せる。
「KDDIが単体で開発するのではなく、違う業種や生活者の声をくみあげることで、スマホの次の製品を発明していきたい」。都内で開かれた発表会で、同社デジタルマーケティング部の社内組織であるAU未来研究所とキリンが共同で開発した、短期集中型で解決策を考える「ハッカソン」から生まれた。実際に企画に携わったハッカソンの参加者は「男の子や大人も楽しめるおままごとセットがあればいいな、との発想から生まれた」と話す。
ままデジは実際の料理の作業に近づけられるよう、音や匂いを出せる機能をつけた。タマネギ、ニンジンなどを登場人物にしたカレーを作る動画がタブレットから流れる。包丁を握って、ニンジンを切ると振動センサーが反応し「コンッ」と音が鳴り、鍋の蓋をあけると加湿機器が働きほわっとした湯気が出る。
タブレットの中に入れる動画などを増やし、より子どもがたのしめるソフトを広げる考えだ。
ただ、現状ではあくまでもコンセプトモデルだ。塚本部長も「すべてのコンセプトモデルを世に出す必要はない」と話し、ままデジの製品化の時期や価格はまだ決まっていない。当面はキリンの工場内に設置するほか学校や家庭向けの需要を見込んでいる。
AU未来研究所は2013年11月にスマホの次を担う製品を生み出すため設置された。ままデジのほか2つのコンセプトモデルを発表しており、スポーツ用品のニューバランスと共同で音が鳴る子ども向けの靴「FUMM(フーム)」は今年度中にも商品化を目指す。コミュ二ーションロボットのクマ型ぬいぐるみ「COMI KUMA(コミクマ)」のモデルを発売している。
他社もスマホに次ぐアイテムの開発を加速している。NTTドコモも同様にくま型のコミ二ュケーションロボット「ここくま」を発売しており、ハッカソンやベンチャー企業との連携を強めている。
塚本部長は「マス向けの生産からニッチな市場に適合したモノを、生活者と一緒になって開発していく。これは他社には違いないAUの特徴になってくるのではないか」と話す。
大手通信各社で端末や料金プランで違いを見出しづらくなり、スマホの月額料金の負担感は消費者の間で高まっている。今後、いかに早く消費者に届けられるか。販路の拡充も課題となる。