いきなり歌声
「サイレンうるさい」
京都府の宇治市消防本部に奇妙な通報が相次ぐようになったのは3年前。「若い人に電話を代われ」という内容で、現場に救急車を出動させると、「おっさんは帰れ」とどなられることもあったという。同本部から相談を受けた府警宇治署は昨年11月、1日に約20回にわたって無言電話などを繰り返したとして、市内の無職女(54)を偽計業務妨害容疑で逮捕した。
同本部にはほかにも、「携帯電話を修理をしたい」といった電話や、歌を歌うだけの119番が後を絶たない。担当者は「緊急性のない通報が増え、本当に必要としている人への出動が遅れる恐れもある」とため息をつく。
「サイレンがうるさい」といった酔っ払いの通報に頭を抱えているのは首都圏の消防本部。「これは緊急通報用の回線ですから」と説明しても、1時間以上愚痴が続くこともあるが、「緊急性が高いという可能性を排除できない限り、一方的に電話を切れない。効果的な対策もない」と語る。
関東地方の別の消防では、擦り傷や打撲など、明らかに軽微な症状で緊急出動を要請する通報になやまされている。担当者は「自分で行けるだろうと思っても、搬送は断れない。たとえ無傷でも、私はけがをしています、といわれたら搬送しないといけない」と話す。
無駄な救急要請などをなくすため、国の財政制度等審議会は昨年5月、救急車の有料化を財務相に提言した。総務省消防庁は検討中だが、関東地方の消防幹部は「有料化は国民の理解を得にくく、実現しても、今度は金をはらっているから、と無理な要求が増えるのではないか」と危惧している。
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