事業への恩恵は不透明
日刊工業新聞社は、政府の環太平洋連携協定(TPP)関連政策大綱がまとまったのを受け、中堅・中小企業経営者に緊急アンケートを実施、100人から回答を得た。交渉の合意内容について全体の8割以上が「評価する」と歓迎する一方、経営の恩恵を期待する見方は約半数にとどまり事業への影響が見通されないでいる現状が浮き彫りになった。「TPP効果はこれまで海外展開に踏み切れなかった地方の中堅・中小企業にこそ幅広く及ぶ」と考える政府は、海外展開支援を強化する構えだが、事業上の利点を具体的に示すとともに丁寧な政府対応が求められる。
2015年10月に大筋合意したTPPは、中小企業が積極的に海外展開を決断し、従来以上に「攻めの経営」に転換できる可能性を秘めている。関税撤廃だけでなく投資ルールや知的財産の保護、通関手続きの迅速化など見込まれる効果は多岐にわたる。アンケートではこれら項目のうち、自社の事業に影響すると思われる項目を複数回答の形でたずねた。
「通関手続きの迅速化」(51社)、「工業製品の関税撤廃」(51社)への期待が大きく、サプライチェーンの拡大につながる「原産地規則の完全累計制度の実現」(24社)、「政府調達市場の開放」(16社)、「投資・サービスの自由化」(13社)がこれに続いた。「グローバルサプライチェーンがどう変化するか注視している」という小泉製麻の小泉康史社長は「輸送方法や資材に商機あり」と話す。東京光電子工業の坂田良明社長は「実際の運用が始まらないと分からない点も多いが、輸出障壁が軽減されることを期待している」。
一方、政府は経済連携協定になじみのない事業者や貿易実務に不慣れな企業を支えるため、全国規模で支援体制を強化する方針だ。だが現時点では、相談窓口が設置されることについて4割が「ほとんど知らない」と回答。周知はこれからといえる。
三進木材の岩瀬俊寛社長は「行政機関の担当者に海外事情に精通した人材が少なく、結局は自社で対応することが多かった」と支援側の人材育成の必要性を指摘する。
とりわけ経営資源が限られる中小企業にTPPを活用を促すには、経営者との日常的な接点の深い金融機関や産業支援機関がTPPの内容を正しく理解した上で、支援先の成長戦略につなげる視点も欠かせない。
調査は昨年11月下旬から12月上旬に実施した。
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