番号を流出させた企業に国が損害賠償を請求することはあるのか。マイナンバー制度を統括する内閣官房社会保障改革担当室の担当者は、「ケースごとに民事訴訟を起こすかどうかの判断になろうかと思うが、主管する総務省に聞いてみてほしいとのこと」。
総務省は、個人番号カードの発行などに関する業務を担っている。電話口に現れた住民制度課の担当者は、当初「ケース・バイ・ケースの判断になると思う」と言っていた。しかし、質問を続けると「一義的には国が発行手数料の1000円を補助する。それ以上のことは何も言えない」と回答が後退した。
結果、総務省としてはケース・バイ・ケースで対応するかどうかを含めて、何ら方針を持ち合わせていないことが分かった。
「内閣府が国会答弁しているので、そちらに問い合わせてほしい」と言って電話はきれた。再び内閣府に問い合わせると、確かに国会答弁は存在するという。
昨年8月27日の参議院内閣委員会で、内閣官房の向井治紀内閣審議官が「会社に過失がなければ、損害賠償を求められることはない」と答弁していた。。ただこの答弁は、個人の被害者からの損害賠償請求について言及したものだ。会社に過失がなければ、国も賠償請求しないと言っているようにも解釈できるが、国の明確な方針を示したわけではない。
また裏を返せば、過失が認められれば、国が企業に損害賠償を求める可能性があることも推測できる。情報セキュリティー問題に詳しい会津大学の山崎文明特任教授は「マイナンバーと同時に収入や家族構成などの情報が漏洩する恐れがあることを考慮すれば、国や自治体、被害者からの請求額は1件当たり数万円になる可能性がある。情報流出をきっかけに、マイナンバー倒産が起きてもおかしくない」と指摘する。
マイナンバー制度の運用開始に伴って、企業は情報セキュリティー上の大きなリスクを抱え込むことになる。それだけに運用主体である国から、より統一的で明確なリスクの説明があってもいいのではないだろうか。
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