人口減・産業衰退を懸念
常陽銀行(水戸市)と、足利銀行を傘下に持つ足利ホールディングス(HD、宇都宮市)という茨城、栃木両県のトップ地方銀行同士が経営統合に向けて協議していることがさきごろ明らかになった。有力地銀の再編は、さらなる再編の引き金となる可能性もはらむ。
「今度こそ関東でドミノが起こる」。常陽と足利の経営統合への動きを聞いた北関東の地銀幹部は、焦りを隠さなかった。
常陽と足利を合算した総資産は約15兆円。関東圏では、千葉銀行の約13兆円を抜き、横浜銀行と東日本銀行が今春発足させるコンコルディア・フィナンシャルグループに次ぐ。これまで静観してきたほかの地銀も再編しなければ、強大な地銀グループの間で埋没しかねない。
足利は2013年の再上場以来、地銀再編の「台風の目」とされてきた。経営再建の受け皿となって足利の株式3割超を持つ証券大手の野村HDはいずれ足利株を売却する、との観測からだ。足利自身も再上場を経て勢力回復を急いでおり、経営陣は「再編は有力な選択肢のひとつ」(首脳)と、かねて水面下で再編を模索していた。
常陽の地元と、足利が地盤とする栃木県は高速道路で結ばれ、人やものの行き来が盛んだ。近年は互いの地盤で低金利の住宅ローンや中小企業への貸し出しを強化しており、「過度な競争がなくなり、隣県ならではのメリットを生みやすい」(地銀幹部)との評価がある。
「ただ、北関東だけが地盤では、いずれ人口減少の打撃を免れない」(同)との指摘もあり、今後、首都圏で営業の攻勢を強めることになりそうだ。
人口減少と地場産業の衰退は、全国の地銀の共通の課題だ。地域に広く店舗を持つゆうちょ銀行が昨年11月に上場し、地銀との競争が一層激しくなるとの懸念もある。
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