気象庁、来年度、10ヵ所派遣
大雨で避難指示など助言
豪雨など発生時に住民の避難が遅れ、甚大な被害に見舞われるケースが後を絶たないため、気象庁は来年度、降雨量が多い市町村10ヵ所を選び、気象予報士を派遣し、常駐させる方針を決めた。派遣後は、気象庁のデータなどから河川の氾濫や土砂災害の切迫度を分析し、首長の適切な避難勧告・支持の発令につなげるのが狙い。単年度モデル事業として検証し、将来的に各自治体へ配置を促したい考えだ。
災害対策基本法では、首長が避難勧告・指示の発令権限を持つが、警報などの情報は五月雨式に出される場合が多く、首長の判断を補佐する役割が重要視されている。
モデル事業では、派遣先の市町村を過去の災害や降雨量を踏まえて決定し、各地の気象予報士会や民間の気象会社に派遣を委託する。梅雨や台風発生時期の6〜10月を想定し、この期間中は常駐させる。
派遣後に大雨が予想される時には、気象レーダーなどのデータを基に風雨の強さやピークを分析し、首長に助言。職員研修で気象情報に関する講師役を務めたり、急傾斜地や低地などを調べたりして住民の適切な避難誘導にも役立てる。来年度予算の概算要求に関連費用5300万円を盛り込み、国が派遣料を支払う。実務経験など派遣条件は今後、検討する。
昨年9月の関東・東北豪雨や、2014年8月の広島豪雨でも避難指示や勧告が発令されたタイミングが問題となった。関東・東北豪雨で深刻な被害に見舞われた茨城県常総市の高杉徹市長は、「特に小さな自治体にとって、気象の専門家がアドバイスしてくれるのは心強い」と評価した。
岩田孝仁・静岡大防災総合センター教授(防災学)の話。「避難の勧告や指示を出しても、実際に住民が避難しなければ意味がない。予報士が日頃からこまめに防災訓練に顔を出すなどして、住民に対し、避難の重要性を意識してもらう必要があるのではないか」
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