指導力保証へ
普及は不透明
塾講師の検定を「国家検定」にする準備が進んでいる。指導力を保証して信頼性を高めたい塾業界と、サービス業の質を上げたい国の思惑が背景にある。2017年にも実現する見込みだが、受験はあくまで希望者のみ。どこまで普及するかは不透明だ。
「中国の主な工業製品はどんなものですか?」。社会科を教える塾講師が生徒に尋ねるこのシーン。塾講師検定(塾検)の受験者向けDVDでは、よくない例として示される。
「中国の工業製品についてクイズをやります。五つ書くので世界一がいくつあるか予想してください」という問い方が「正解」。塾検を手掛け、DVDをつくった全国学習塾協会(東京都)によると、「興味を引き出す工夫をしている」という。
塾検は、08年に業界独自の検定として始まった。1〜3級に分かれ、最もやさしい3級の試験は、担当教科の公立高校入試水準の学力やマナーをみる筆記。1〜2級は模擬授業を録画し、協会が選んだベテラン講師らが審査する。DVDは模擬授業の解説としてつくられた。
検定の目的を「基本技能のある講師の育成」に置くため、1級の想定水準は「授業を1人で任せられる3〜4年目レベル」で、いわゆる「スーパー講師」ではない。協会の稲葉秀雄専務理事は「塾によっては未訓練の学生アルバイトが指導するケースもある。少子化も見据え、基本的な技量を担保して業界の信頼を高める狙いだった」と話す。
この塾検を、国の技能検定に衣替えする動きが昨年から進んでいる。技術職中心の技能検定をサービス分野にも広げたい国の募集に、塾協会が応じた。「人口減で一人ずつの生産性向上が課題です。対人サービスでも努力の目標になる技術指標を設けたい」と厚生労働省能力評価課の担当者。塾以外に、百貨店や旅行添乗員など5業界が国家検定化を目指している。
一方、現行の塾検は、受験者数の低迷が課題。最多の2級でも昨年までの7年間で延べ924人、合格者708人にとどまっており、「国のお墨付きがあれば目標にする講師も増えるだろう」と協会は見込む。
国家検定化に向けて、「集団指導」のみの検定対象を「個別指導」に広げる一方、「教える技能をみる」という目的を明確にするために、学力試験は省く予定。関係法令の改定や検定内容の確認などを経て、17年にも始まりそうだ。
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