レトロ一新、青山でも入浴
都内でスタイリッシュな銭湯が注目を集めている。ここ数年、銭湯が相次いで昭和レトロなイメージを一新し、おしゃれでモダンなデザインに改装。高齢者に加え、学校や仕事帰り、子供連れなどこれまで銭湯になじみの薄かった10〜30代の男女の姿が目立つ。初めての利用でも入りやすくなり、気軽に非日常空間を楽しめるのが人気の理由のようだ。
「動いたよ!」。8月上旬の平日の夜、西武池袋線の桜台駅(東京・練馬)から徒歩約5分の銭湯「天然温泉 久松湯」。練馬区の会社員、代田雅哉さん(31)の長男(3)が湯につかりながら壁にくぎ付けになっていた。銭湯といえば壁一面に富士山の絵が描かれていることが多いが、代田産たちの視線の先にはプロジェクトマッピングが投映されていた。
男湯から女湯の白い壁を縦4メートル横10メートルのスクリーンとし、光の滴が天井方向からひし形模様に沿って流れ落ちたり、たまった光の水が湯気となって天井方向に吸い込まれたりする。約20分間に3パターンの光の流れが投影映され、月2〜3回のペースで通っている代田さんも「ぼーっとついつい飽きないでながめてしまう」とリラックスした表情で話す。
外壁は白い壁と窓ガラスで構成され、博物館や美術館と見間違うほど。周囲を木々に囲まれ、天井の窓、脱衣場や洗い場を挟む中庭からの光によって自然の中で入浴しているような雰囲気だ。この日初めて訪れた会社員、塩崎茜さん(30)は「一人でも利用しやすい。おしゃれで銭湯っぽくない」と満足げだ。
久松湯は1956年に開業した。老朽化した木造施設を取り壊す際、将来も続けられる施設として「和風のデザインや浴場壁のペンキ絵という表層的なイメージに縛られたくない」(風間幸雄店主)と決断。2014年5月にリニューアルした。これまで高齢者が中心だったが、老若男女の幅広い客層が集まり、1日の利用客数は平日で300人台、土日で600〜700人と改装前3倍以上になっている。
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