成年後見着服事件相次ぐ
東京家裁「不正防止を」
認知症や障害などで判断力が十分ではない人の成年後見人に選ばれた弁護士が財産を着服する事件が相次ぎ、東京家裁は弁護士の不正をチェックするために別の弁護士を「後見監督人」に選任する運用を新たに始めた。家裁は再発防止に厳しい姿勢で臨む考えだが、弁護士が弁護士の仕事に目を光らせる仕組みに、弁護士会からは「弁護士が信用されていない」と反発の声も出ている。
弁護士ら親族以外専門職が成年後見人に選任される割合は増加傾向にあり、弁護士の選任は2014年は全体の20%に上った。家裁は後見人から定期的に提出される報告書を通じて業務をチェックしている。12年には、精神疾患のある女性の後見人をしていた東京弁護士会の元副会長が期限までに報告書を提出しなかったため調査したところ、女性の財産に多額の使途不明金が発覚。元副会長が着服を認めたため解任した。元副会長は翌13年、東京地検に業務上横領容疑で逮捕され、着服額は総額約4200万円に上った。
弁護士による同様の問題は各地で繰り返されている。最高裁によると、弁護士や司法書士ら専門職による着服などの不正は、調査を始めた10年6月から14年末までに全国で少なくとも62件、約11億2000万円に上る。今年も認知症女性の後見人をしていた東京の元弁護士が逮捕され、1億円以上を着服した疑いがもたれている。
こうした事態に、東京家裁は昨年末から、弁護士の後見人が一定額以上の財産を預かる場合には、後見監督人として別の弁護士を付ける運用を独自に始めた。後見監督人は、後見人から事務報告を受けたり、後見人の財産調査に立ち会ったりして監督するしくみだ。
後見監督人は従来、親族が後見人になる場合に付けることが多く、弁護士の後見人に付ける例は業務に著しい遅滞がった場合などに限られていた。東京家裁によると、新たな運用は既に相当数の例があるといい、「後見制度は財産を保護するのが最大の目的で、何としても不正を防止したい」と強調する。
一方、全国の弁護士会も14年以降、研修義務付けや、家裁への報告を怠らないよう監督する仕組みを作るなど再発防止には取り組んできた。東京家裁の運用について、日弁連高齢者・障碍者権利支援センター事務局長の青木佳史弁護士は「多額の財産を預かるというだけで、不正の兆候がない弁護士に監督を付けるのはおかしい。弁護士会の再発防止策を信用していない」と反論。「信用を得られるよう、まずは実績を見せるしかない」と話した。
成年後見制度とは〜
認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人を法的に支える仕組み。本人や親族の申立てに基づき、家裁が後見人に選任した親族や弁護士、司法書士などが、本人に代わり財産管理や契約行為を行う。
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