中小、規定作り急務
社員の発明で得る特許が企業のものになる改正特許法がさきごろ、参院本会議で可決、成立した。これからは発明に携わった研究者の意欲をより引き出す手当てが企業に求められる。中小企業の多くは社内規定を設けていない。2016年春に見込まれる施行に向けて、社員に報いる仕組みづくりが活発になりそうだ。
従来は「職務発明」の特許を受ける権利は発明者に帰属していた。改正法では契約や勤務規則などで決めた場合ははじめから会社に帰属できるようにした。社員が他の会社に特許を売却するといった二重譲渡のリスク軽減にもつながる。
従来「発明の対価」は金銭のみだったが、改正法では「相当の金銭、その他の経済上利益を受ける権利」と明記された。ここが企業の知恵の絞りどころとなる。特許庁は「処遇や留学など幅広い内容で発明者に報いることができる」と説明する。
特許庁は職務発明に関する社内規定作りの指針を年末にとりまとめる。すでに大企業の99%が社内規定を設けているが、「指針を見てから具体的にどういったメニューを盛り込めるかを検討する」(ある化学大手)という声もある。社員のやる気が低下するリスクを抑えるために、報酬額の引き上げを検討する企業も出てきそうだ。
中小企業は事情が異なってくる。特許庁によると中小企業の80%は社内規定を設けていない。この場合は改正法でも特許は社員に帰属することになり、発明者が退職後に第三者に譲渡するリスクは残る。ルール作りは中小企業にとって急務となる。
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