背景に家族の形多様化
こんにちは北区王子の税理士松村憲です。
遺産相続を巡るトラブルを防ぐために、公証人の助言を受けて作られる遺言公正証書の年間作成件数が2014年に初めて10万件を突破した。高齢化の進展に加え家族の形態が多様化し、法律の定めとは異なる相続を望む人が増えていることが背景にある。今後もニーズが高まることが予想されるといい、日本公証人連合会(日公連)は大切な遺言を確実に保管するために証書のデータ化にも取り組んでいる。
日公連によると、遺言公正証書の作成件数は、法的効力の確実性を背景に1971年の約1万5000件から増加を続け、14年は10万4490件に達した。
近年は「夫婦に子供がおらず、疎遠な兄弟に財産を渡したくない」「事実婚でパートナーに財産を残したい」などという理由で法律で定められた相続分を変更したり、相続権がない人に遺産を残したりする例も多く、家族形態の多様化が増加の一因になっているという。
財産管理を担う弁護士や高齢者ケアに当たるNPO法人なども公正証書化を勧めている。信託銀行も遺言公正証書を使った「遺言信託」のサービスを競っている。今年1月の税制改正では、相続税が非課税となる基礎控除額が従来の6割に引き下げられた。相続税に無関係だった層も課税対象となるため、トラブル防止のための遺言公正証書のニーズが高齢者の間で今後も高まるとみられる。
一方、遺言を残した人の判断能力が認知症などで疑われる場合は、死後に遺言の有効性を巡って親族間の訴訟に発展する例もある。このために日公連は判断能力を確認する研修などを増やして対応しているという。
公正証書の保管も重要な課題だ。東日本大震災では宮城県石巻市の公証役場が津波の被害に遭い、保管書類を流されそうになったことから、全国の公証役場は昨年4月から、遺言公正証書のデジタル保存を始めた。災害に備えて原本をスキャナーで読み取り、デジタル化したデータを山間部にあるサーバーで保存している。
日公連理事長の井内顕策公証人(66)は「相続の確実な手段として遺言公正証書の利点が認識されてきた。今後も公証人の役割をアピールし、信頼性を高めたい」と話している。
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