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2015.08.19更新

紙の本、ネットで簡単に

 デザインエッグ(大阪府東大阪市)は書籍関連のサービスを手掛けるIT(情報技術)ベンチャーだ。主力サービスは、4980円で紙の本を自費出版できる「MYISBM]。縮小を続ける紙の出版市場だが、創業者の佐田幸弘(30)は「出版とITをうまく組み合わせれば、もっと潜在需要を引き出せるはず」と期待を膨らませる。
 佐田さんがデザインエッグを設立したのは2010年5月。電子書籍元年ともいわれた当時、佐田さんはメーカーでマーケティング関連の仕事をしていた。だが、「電子書籍は今後絶対に流行する」と確信。この世にはない新しい電子書籍のプラットフォームを作ろう、と会社設立に踏み切った。
 パートナーのエンジニアと二人三脚で開発にあたlったが、「苦戦することばかりだった」。12年春、苦労の末に電子書籍サービスを発表したが、佐田さんの予想ほど電子書籍市場は拡大していなかった。出版業界につながりもなく思うようにサービスを広げることができなかった。
 会社設立時、佐田さんにはどうしてもどうしても譲れない信念があった。それは「世界初のサービスを作る会社にする」ということだ。だが、自信があった電子書籍サービスが失敗したことで途方に暮れてしまった。「世界初のサービスなんてそうそうにない、と信念を見失いそうになった」
 しかし、失敗に終わった電子書籍サービスが思わぬ形で次のアイデアにつながった。13年に公開した「MYISBN]を思いついたきっかけは、電子書籍サービスの運営時に聞いたある筆者の言葉。「電子書籍はあくまで紙の書籍の代替手段。できれば紙の本を出版したい」。そう考えている人が意外に多いことに気がついた。
 ただ、紙の本を自費出版するためには様々な課題がある。最も大変なのは、書籍を書店などで販売するための書籍のISBN(国際標準図書番号)コードを取得すること。コードを取得するためには住所など個人情報を公開する必要があり、個人が取り組むにはハードルが高い。そこで佐田さんは著者の代理でISBNコードを取得し、出版社の役割を果たすサービスを考案。それが現在の「MYISBN」だ。
 現在、デザインエッグが出版した書籍は計約300タイトルにのぼる。大学教授が教科書を出版することもあれば戦争体験者が手記を出版することもある。「MYSIBN」の強みはニッチな需要に応える本を出せること。従来の方法では自費出版にしても数百冊単位で発注しなければならず、多大な初期費用がかかる。
 しかし、完全受注で本を制作しているデザインエッグでは、1人でも欲しいという人がいる本なら紙の書籍として出版することができる。例えば「マシジミ」の研究をしている人がマシジミのに関する本を出版したところ「月1〜2冊ペースではあるが受注が続いているという。
 3月にはアプリ開発のインバス(大阪市)と組み、「MYISBN」の利用者を広げるためのサービス「∞BOOKS(ムゲンブックス)」をはじめた。ムゲンブックスはWEB上に本の内容を打ち込むだけで簡単に書籍化できるサービス。「だれでも本を出せるようにしたかった」。これまでは著作物をPDF形式にしてアップロードしてもらう必要があったため、高齢者やパソコンに練れていない人は利用することができないという課題があった。
 「次は電子書籍と紙の書籍、両方の長所を融合したサービスを開発したい」。業界を一変させるような「世界初」の書籍サービスを開発するため、闘志をみなぎらせている。 

投稿者: 松村税務会計事務所

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