政府方針
2〜3%軸に調整
政府は、介護サービスの公定価格である「介護報酬」を、来年度から引き下げる方針を固めた。引き下げは9年ぶり。急増する介護費用の抑制が狙いだ。財務省と厚生労働省で下げ幅の調整が続いているが、2〜3%が軸になりそうだ。
介護報酬は3年に一度見直しがある。介護サービスの料金の料金なので、下げれば事業者が受け取るお金が減る。結果としてサービスの質が低下したり、介護スタッフを集めにくくなったりする心配がある。
一方、下げれば介護保険の支出が減る。税金や介護保険料はその分少なくてすむ。使ったサービス費用の1割の負担も減る。介護報酬を全体で1%下げると、これらの支出は計1千億円減る計算だ。
高齢化が進み介護給付費は増加の一途だ。介護保険制度が始まった2000年度の3兆6千億円から今年度は10兆円に達した。こうした情勢をふまえ、財務省は介護報酬のマイナス改定を求めた。介護事業者を対象とした国の調査(14年)では、企業の利益率に近い「収支差率」は平均約8%。中小企業の利益率2.2%(13年度)を上回っているとの理由だからだ。
介護報酬は09年度と12年度の2度にわたり、介護職員の待遇改善などのためプライス改定が続いてきた。それでも介護職員の平均賃金は月22万円弱で、全産業の平均32万円との開きはまだ大きい。厚労省は今回もプラス改定を求めていたが、政府としてマイナス改定の方針になった。報酬が下がれば介護職員の給料アップは一層難しくなる。
介護報酬の引き下げは一律ではなく、特別養護老人ホームなど「収支差率」が高いサービスを中心に下げ、全体をマイナスにする方向だ。財務省は、待遇改善に狙いを絞った報酬の仕組みなどを活用すれば、マイナス改定と待遇改善は両立するとしている。だがもくろみ通りにいくかは不透明な面もある。
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