禁煙で企業変わるか
事業面の利点に注目
ビジネスにたばこは要りません_。事業所を禁煙にしたり、喫煙者の採用を控えたりする事例が相次いでいる。目的の一つはもちろん社員の健康維持だ。だが長く取り組んできた企業はこの点よりも、生産性やブランド力の向上効果が大きかったとの見解を示す。最近禁煙を始めた会社も、たばこを吸わないことによる事業面での利点を訴えている。禁煙への取り組みを通じて自社を変えられるか、良い企業文化を形成できるかが試される。
顧客のために
たばこの箱には喫煙に伴って心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まるといった警告文が記載されている。このような社会的認知からも禁煙は健康維持の文脈で語られることが多い。だが10年以上前から禁煙を進めてきた企業は健康面の利点を認識しつつも、生産性向上やブランド力の強化といった効果を実感している。
「時間やスペースは顧客のために使うという考えを伝えられた」。星野リゾート(長野県軽井沢町)の小金井成子グループ人事ユニットディレクターは、2002年に始めた社内禁煙の効果の一端をこう説明する。
同社は経営難に陥った宿泊施設を従業員ごと引き継いで再生してきた。
その際、他社出身の喫煙者へ禁煙を促すことが企業文化を浸透させる一つの機会になったという。社員用の喫煙所を置く余裕があるならば廃止して宿泊客へのサービスに充てる_。こうした顧客志向を社内で再確認した。
ソフトウエア開発を手がけるアクロクエストテクノロジー(横浜市港北区)は00年から社内を禁煙とした。鈴木達夫組織価値経営部マネージャは「健康への影響よりも、会社にとって良くないという議論が先にあった」と振り返る。
喫煙所へ行くだけで時間を要し、他社の人も出入りするため会話を聞かれて機密情報が漏れかねない。飲み会や社員旅行では喫煙者と非喫煙者で積が分かれてしまい、一体感の形成が阻害されるとも考えた。
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