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2015.01.09更新

愛知県豊田市

 愛知県で2番目に多い約40万人の人口を抱える豊田市。トヨタ自動車のお膝元として企業が集まる一方、県内では最も広い面積をもつ農村地域としての顔もある。そうした特長を生かし、企業の人材育成などに農村体験の活用を促す取り組みを進めている。
 「いい香り。こんな場所が市内にあったなんて」。今年7月、豊田市北東部の稲武地区にあるラベンダー畑に合計70人ほどの男女が集まった。
 慣れない手つきで剪定(せんてい)作業をしていたのは大和ハウス豊田支店の従業員だ。普段は営業など、農作業とは無縁の生活を送るが、会社が社内制度を使う社会貢献活動としての畑での作業を取り入れた。農作業を通じた社内交流の活性化や行動力の養成が狙いだ。
 この活動を仕掛けたのは一昨年8月に豊田市が立ち上げた「おいでん・さんそんセンター」だ。農村の高齢化や過疎化への対応策として、都市住民と農村の交流事業を調整する。都市の企業や個人が農村でしてみたいこと、農村がしてほしいことをデータベースにまとめ、両者を結びつける懸け橋の役割だ。
 個人から募るボランティア集団「集落応援隊」も農村に派遣する。市道の整備や夏祭りの準備など地域の活動を手伝う。
 過疎問題を巡っては5月に民間の創成会議(座長・増田寛也元総務相)が全国の地方自治体の半数を「消滅可能性都市」として公表。全国各地の自治体に衝撃が広がった。
 現在、豊田市の高齢化率は全国平均を下回り財務健全性も高いものの、2005年の「平成の大合併」で編入した旧旭町や旧稲武町などでは過疎化や高齢化が深刻だ。市の試算では人口流出で市内に211ある農山村集落は、20年には約半数が限界集落になる。
 おいでん・さんそんセンターはそうした危機感から設立された。高齢化が進む農村は労働力だけでなく、地域を引っ張るリーダーの不在が課題となっている。センターの農業体験で田舎暮らしの魅力を知り、Iターン(移住)する人が地域の新しいリーダーに育っていくよう期待している。
 鈴木辰吉センター長は「単なるボランティアで終わらず、農村が秘めるビジネスの種を発掘したい」と語る。9月に開いた学生インターシップではブルーベリー農園での収穫作業に加え、廃業した温泉の再生を現地で宿泊しながら考えるグループワークもプログラムに組み込んだ。課題が山積みする状況を逆手にとり、問題解決能力を養うという触れ込みだ。
 現在は豊田市役所足助支所の一室に事務所を構え市の出先機関という位置づけだが、16年にはNPO法人などに民営化する方針。都市と農村が互いの強みと弱みをを補い、支え合う社会が豊田市の描く理想像だ。同市と同じように農山村集落の消滅に危機感を持つ他の自治体からも問い合わせが相次いでいるという。

投稿者: 松村税務会計事務所

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