文化審が答申、産業界で初
文化審議会(宮田亮平会長)はさきごろ、6月に世界文化遺産に登録された富岡製糸場(群馬県富岡市)の「繰糸所」などの3棟を国宝に指定するよう下村博文文部科学相に答申した。明治以降の近代建築が国宝指定されるのは、迎賓館赤坂離宮(旧東宮御所、東京都港区)に次いで2例目。産業遺産では初めて。
繰糸所など3棟「絹文化発展に貢献」
ほかに国宝指定の答申が出たのは、繭を乾燥・貯蔵していた「東置繭所」と「西置繭所」。3棟はいずれも木材の骨組みの間にれんが壁を積む木骨れんが造りが特徴で、建物の長さは繰糸所が140メートル、東西の置繭所が104メートルある。
富岡製糸場は明治政府が1872年に設立し、殖産興業の柱になった。答申は「西洋の技術を日本固有の技術と融合させることで産業革命を成し遂げ、世界の絹文化の発展に大きく貢献した。文化史的に深い意義がある」と評価した。
世界遺産の登録後に国宝指定された例は東大寺2月堂(奈良市)などこれまでに3棟ある。
また、築地本願寺本堂(東京都中央区)、愛知県庁舎と名古屋市庁舎(いずれも名古屋市)など9件を新たに重要文化財に指定するよう求めた。築地本願寺本堂はインドの古代仏教建築の要素を採用した独自の建築様式を評価。名古屋市庁舎と愛知県庁舎は、タイルを張り巡らせた洋風建築に瓦屋根を載せた造り意匠的に優れていると判断された。
このほか、江戸時代に宿場町として栄え、街道沿いに伝統的な家屋が残る長野県千曲市の稲荷山地区について、重要伝統的建造物群保存地区に選定するよう答申した。
いずれも近く答申通り指定される。建造物分野の国宝は221件、国宝を含めた重要文化財は計2428件、保存地区は109地区となる。
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