特許庁普及後押し
専門家派遣、費用負担も
政府は中小企業が特許などの知的財産を担保にして、金融機関から融資を受けられる仕組みの普及に乗り出す。
特許庁から中小企業に対し、知財の資産評価などにかかわる専門家を派遣するほか、融資判断につながる知財の「評価書」の作成費用を全額負担する。融資が広がれば、中小企業が知財を事業拡大につなげる取り組みの後押しとなりそうだ。
競争力底上げへ
多面的な支援必要
中小企業にとって知的財産の取得・維持は簡単ではない。特許取得には数十万円の費用を要する。特許が必ずしも収益事業につながるとは限らず、特許の維持費用が中小企業にコストとしてのしかかる可能性もある。「ものづくり」の土台を支える中小企業の知財戦略をめぐっては、企業ニーズに即した多面的な支援策が問われそうだ。
特許庁によると、平成25年の特許出願件数の約27万件のうち、中小企業による出願は約12%にとどまる。
大企業は収益につながるか不透明な特許も取得しておき、ノウハウを囲い込む戦略がとれる。中小企業は大企業のような知財担当者の配置が容易でなく、「独自技術があっても知財取得に尻込みする企業もある」(特許庁)という。
「知財立国」を目指す政府は、中小企業による特許料の軽減や国際出願料の補助などの支援策を打ち出している。一方、知財をめぐる経営戦略では、他社に知財を開放して技術発展につなげる「オープン化」の潮流もあり、中小・ベンチャー企業による知財戦略の支援は一筋縄ではいかない。
中小企業の競争力の底上げには、知財担保融資のように、独自技術に資金が集まる金融面の環境整備が不可欠だ。
知財を担保に金融機関が融資する場合、特許権などの無形資産の価値を正しく評価する必要がある。特許庁によると、知財で資金調達したいというニーズが中小企業にある半面、企業側にも金融機関側にも、知財評価の専門家やノウハウが不足しており、融資拡大のハードルとなってきた。そのため特許庁は、知財担保融資で金融機関と調整を進める中小企業へ、知財に詳しい中小企業診断士や弁理士を派遣する制度を設けた。中小企業は専門家の支援を受けて、知財を資産評価するなどした報告書を作成。金融機関は、報告書をもとに融資の判断をする。
特許庁はこうした制度を活用したい金融機関の公募をしており、すでに6月に実施した第一次公募で19件を採択。9月から11月までの二次募集でも35件程度を採択する予定だ。
平成26年度に試験的に始めた知財担保融資の支援を本格化させるため、特許庁は27年度予算の概算要求で報告書の費用負担などのため1億円を計上した。
特許庁によると、中小企業で特許の出願・維持コストを考慮し、独自技術を持ちながらも特許を取得しないケースがみられる。融資の仕組みが浸透すれば「知財への意識が高まり、出願が増える可能性もある」(普及支援課)という。
知財融資をめぐっては、千葉銀行が今年5月に独自の制度を作った。「財務諸表に表れない技術力や商品の強み」(同行)を評価して、原則無担保で融資する仕組みでこのほど融資の第一号案件が出た。
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