「失恋」がビジネスの世界で注目されている。タクシーの女性運転手と古都を巡る旅行が好評で、どうにも捨てられない思い出の品を買い取る会社も登場した。大事な恋を失い、一人涙に暮れるのは、もう古い_?
「失恋タクシー」
京都にそんな名前の失恋の傷を癒すサービスがある。女性が運転するタクシーで、JR京都駅から約4時間かけて古都を巡る。
京都市中京区の旅行会社「チュルカトラベル」が3年前に始めた。一人でタクシーを貸し切る場合、費用は税別で2万円。「婚約が破談になった」「恋に疲れ果てた」といった理由で、これまで20代後半〜50代後半の女性約60人が利用した。
昨年8月に利用した岡山県の30代の女性は「ただ庭を見て、お茶を飲んだだけなのに涙が出た」。「失恋の痛みはその人にしか分からない。旅先の見知らぬ運転手だからこそ話せることもある」と、ある運転手は話す。
衝心の京都旅お供、思い出の品買い取り
ブランド品買い取りサービス「デファクトスタンダード」(東京都大田区)は今年3月、終わった恋の思い出の品を買い取る「失恋BOX」を始めた。
全国からこれまで届いた段ボール箱は300箱に上る。貴金属やバッグなどは査定して依頼者にお金を払い、手紙や写真は一定期間保管してから処分する。もともと期間限定の予定だったが好評だったため、ビジネスとして定着した。
恋の悩みを仕事につなげた人もいる。東京都杉並区の分筆業、清田隆之さん(34)は大学時代から、友人らとともに女性約500人の恋愛相談を受けてきた。その分析などで発信するうちに編集者の目に留まり、今年2月に本を出版した。
自身もつらい恋愛を経験したという清田さん。恋が終わる原因の多くは、「女性は相手との関係性を重視しすぎ、男性は自分の評価を気にしすぎ」だとか。
美容室6店を経営する「チカラコーポレーション」(神戸市)は2011年、「笑顔で接客してほしいから」と社員向けの「失恋休暇」制度を設けた。20代前半は1日、20代後半は2日、30代以上は3日間取得でき、離婚はさらに1日ずつ多くなる。女性の取得者はいないが、離婚した男性3人が活用した。「福利厚生が充実している」などと就職を希望する人も増えたという。
今の時代、なぜ失恋がビジネスに結びつくのか。経済評論家の森永卓郎さんは「悩む姿をさらすことに社会が寛容になり、サービスの利用に抵抗感がなくなった」と分析。立正大学の斉藤勇名誉教授(対人心理学)は「晩婚化で恋愛と失恋を繰り返す人が増えた。何歳になっても恋愛に前向きでいたという恋愛志向の高まりもある」と話す。
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