税控除の上限額倍検討
安倍政権は、故郷や応援したい自治体に寄付の形で納税できる「ふるさと納税制度」で、税金の控除を受けられる上限額を倍増させる検討に入った。政権は来春の統一地方選挙をにらみ、地方の自治体は税増収への期待感でざわめくが、税収を取られる都市部の自治体は警戒をする。「特典競争」の過熱を避ける規制も議論になりそうだ。
地方、税収増へ期待感
「ふるさと納税」をさらに充実させようと提案したのが菅義偉官房長官だ。「もっともっと活用すべきだ。(控除の)額を倍にするとかいろいろな考え方がある」。訪問先の兵庫県小野市でそう語った。
菅氏は制度の「生みの親」だ。第一次安倍政権で総務相だった時、都市と地方の税収格差を埋める狙いで提案し、2008年に始まった。本来は自分が住んでいる自治体に支払うべき税金の一部を、代わりに自分が選んだ自治体に寄付の形で払うことができる。寄付額から2千円を差し引いた分が、その年の所得税還付と翌年の住民税減税によって本人に戻る仕組みだ。
住宅ローンの有無や家族構成などで異なるが、例えば年収500万円で夫婦のみの場合では、全額控除される寄付額の目安は3万円。寄付したあとに確定申告すれば2万8千円が戻ってくる。
人気に火がついたのは各自治体がPRのために、寄付した人に特産品などをプレゼントするようになったためだ。総務省によると控除を受けた人は09年度の約3万3千人から13年度は約10万6千人と3倍超になった。総額も09年度の約73億円から13年度は約130億円へ8割も増えた。
安倍政権はこの人気を利用して、控除額を倍にすることを検討している。さらに、住んでいる自治体と寄付した自治体同士がやりとりして、確定申告をしなくてもお金が戻ってくるようにする手続きの簡素化も検討している。
安倍晋三首相はさきごろ、13年度に「納税」獲得額で1位に躍り出た鳥取県を訪ねた。特典として人気の地ビール工場を視察し、「ふるさち納税と特産品を合わせるのはすばらしいやり方だ」と絶賛した。
政権、統一選を意識
都市部は減収を警戒
集団的自衛権の行使を認める閣議決定の影響で、報道各社で内閣支持率は下降傾向だ。秋には福島、沖縄と二つの重要な知事選が待ち構え、来春には統一地方選も控える。
政権はふるさと納税など「ローカル・アベノミクス」と銘打って地方対策に力を入れ、支持率回復を狙う。
しかし、国が財政難のなかで公共事業や地方交付税で支え続けるのは限界がある。やる気のある自治体や地場産業を支え、経済活性化の牽引役となってもらわなくてはならない。
ふるさと納税は、地方の「自助努力」を政府が後押しする典型例との位置付けだ。
ふるさと納税で控除額を倍増させても、国税が大きくへるわけでもない。そのため、財務省も静観の構えで、政治的なハードルも高くはない。
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