若手の離職を防ぎ、育てて、業績アップ!
大卒者の今春の就職率は94%と3年連続でアップしたが、3年以内の離職率も上昇傾向にあり、昨年は31%に達した(いずれも国の調査)。下手に叱ってやめられては大変と、書店には「褒めて育てる」指南本があふれる。あなたの職場では上手に褒めて若手の心をつかんでいますか。
夕方の東京・新橋駅前。「これから同僚と一杯」という待ち合わせ人たちに最近、どんな言葉で褒められたかを尋ねてみた。まずはインフラ関連企業に勤める男性(29)。ノーネクタイながらシワのないシャツがいかにもまじめそうだ。褒められる機会も多かろうと期待したが「うーん、あまり記憶にないですねえ」と、考え込んでしまった。病院勤務の男性(35)は「人員不足で職場では皆イライラしているよ。褒めたり、褒められたりなんて余裕はとても・・・」。
一方、地方銀行勤務の女性行員(42)は「一生懸命やっても結果が出ないことの方が多いじゃないですか。でも日ごろの頑張りは無視されて、偶然の結果を褒められたりすると、やつぱり上司って結果しか見ていないんだとがっかりしちゃう」。出版社の女性編集者(36)は「礼儀正しさや言葉使いを褒められることはありますが、そんなことより仕事を認めてほしい」。
「上司は、頑張っているな、よくやっているな、といってくれるがどこが評価されているのか分からず戸惑う」と言うのは地方公務員の男性だ。
いやはや難しい。上司世代のサービス業の男性(64)がすこしヤケ気味に言った。「おれは褒めも叱りもしないんだ。褒めるのはわざとらしいし、叱って恨まれるのも嫌だからね。でもね、成長するヤツは何も言われなくても成長するんだよ」
「皆さん本当にもったいない。上手に褒めることは職場の雰囲気をよくするだけでなく、社員のやる気を高め、業績アップにもつながるのに」。そう嘆くのは、一般社団法人「日本ほめる達人協会」理事長で、全国の企業や官公庁で褒め方の研修を実施している西村貴好さんだ。西村さんによれば、職場での褒め方の基本は「事実を挙げ、それが仕事にどう役立ったか」を指摘することだという。例えば、部下が書類をホチキスで丁寧に留めていたら「体裁がきちんとしていると、資料そのものの信頼性も高まるものなんだ。ありがとう」、会議中の問題なくお茶を出した部下には「いいタイミングでお茶を出してくれたね。ありがとう」といった具合だ。
「事実を基にしているので、本心かな、という疑いを抱かせません。そんな小さなことを褒めると部下にナメられないか、との心配は不要です。今の若い人の心はガラスのように繊細。むしろ、こんな細かい部分まで見てくれているのか、と受け止めます。それでも部下が本気にしなければ、OOさんもそう言っていたよ、などと第三者の評価を挟んだり、少なくとも私はそう思う、と主観を全面に出したりすると良いでしょう」
子供だましと侮るなかれ。ある大手生命保険会社が管理職と営業社員約140人に「ほめる達人」研修を行い、部下の指導や営業活動に生かしてもらったところ、研修前に1.97件だった月間平均契約件数が、3ヵ月後には3.54件に伸びた。
調査会社「サーベイリサーチセンター」が全国の管理職と一般社員計約660人を対象に行った調査では「褒められるとやるきが高まる」と回答した人は8割に上る一方、管理職の7割が「部下を褒めにくいと感じたことがある」と回答。さらに「褒められている方だと思う」「そう思わない」の二つのグループを比較したところ、前者の51%が「少々困難な目標でも挑戦したいと思う」と答えたのに対し、後者は30%にとどまった。褒める効果は確かにあるようだ。
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