情報漏えい
最終益相当を計上
200億円、再発防止、追加負担も
情報漏えい問題がベネッセホールディングス(HD)の経営に重い足かせとなってきた。同社は、被害者への金銭保証などに200億円の資金枠を設けることを明らかにした。顧客からの苦情が想定以上に多く、年間最終利益(14年3月期199億円)に相当する費用を計上せざるを得ない事態に直面した。
退会申し出3000件
「(事態の)重大さを認識した上での決断だ」。ベネッセHDの原田泳幸会長兼社長はさきの会見で、約5万件の苦情、問い合わせがあり、うち3000件が退会の申し出だったことを明らかにし、200億円の費用計上が顧客の信頼を回復するための「経営判断」であるとの認識を示した。背景には、類似したケースとの比較があったようだ。
例えば、ポイントカード会員の住所などが流出したローソンは2003年、115万人に一人500円の金券を配布。09年には5万人に1人1万円の商品券を配った三菱東京UFJ証券(現三菱東京UFJモルガン・スタンレー証券)の例もある。
ベネッセの場合も、件数は最大で2070万件と膨大で、対象が子供であることも例が少ない。原田氏は会見で「過去の例にあるように、一人500円の金券(を配る)謝罪だと2000万人で100億円になる」と説明し「おおよその金額」としての判断が200億円だと説明した。
同社は未就学児から高校生までを対象にする通信教育市場でシェア9割を握る「巨人」。教育現場にも食い込み、高校4500校と教材などの取引があるほか学力テストなども数多く受注している。
野村證券の繁村京一郎シニアアナリストは「新規会員の獲得などへの影響が心配される。信用の低下がどこまで尾を引くかがポイントだ」と分析する。
だが、必要な費用は顧客への謝罪対応にとどまらない可能性もある。情報管理体制強化のための新たなシステム対応が必要なケースもあるからだ。11年に外部から情報システムに不正アクセスを受け、ゲーム関連サービスの顧客情報740万人分が流出したソニーは、セキュリティー強化や売上げ減少などで100億円の損失が出た。メリルリンチ日本証券の北見雅昭アナリストは「教育業界は、強固な情報管理体制に対応できる企業だけが生き残っていくだろう」と指摘した。
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