貸し出し減少、収益性低下
金融庁は先般、「金融検査の年次報告書」を初めて公表した。一部の地方銀行の融資事業はすでに採算割れしている上、今後、人口減で貸出残高が減少するとの見通しを示すなど、地銀の経営上の問題を指摘。金融庁は地銀に対し再編を視野に、経営体力の強化を促す構えだ。
検査報告書を初公表_金融庁
警鐘〜
「貸し出しの量的拡大といったビジネスモデルは、全体としては中長期的に成立しない可能性がある」。金融庁が報告書で、地銀経営の将来に警鐘を鳴らした。
各都道府県では、比較的規模の大きい地銀、中規模の第二地銀、さらに規模の小さい信用金庫、信用組合がひしめき合い、過当とも言える競争を繰り広げているためだ。
報告書は、人口減により、2025年には全都道府県で現在よりも貸出残高が減少すると予測。メガガンクと異なり海外事業を展開しにくい地銀は、これまで以上に厳しい競争にさらされるとの見ので通しを示した。
収益力についても1、大企業や地方自治体向けの貸し出しを増やそうとしているが、利ざやが薄い2、低金利の影響で、収益性が全体に低下3、経費削減は、営業力の低下を招く可能性がある_と課題を列挙した。2割強の地銀が中小企業向けの貸し出しが赤字になっているとの現状も指摘した。
一方、課題克服のために、「銀行のガバナンス(統治)のあり方も含めて経営陣との間で議論を進めたい」と明記し、金融庁として、再編を含めて、地銀の経営に積極的に関与する考えを示した。
乏しい危機感〜
地銀側には、再編の機運が乏しい。足元では業績が好調だからだ。金融庁がまとめた地銀106行の14年3月期決算の集計結果によると、税引後利益が前期と比べ3割も増えた。
ただ、好業績は株高や景気回復による不良債権処理費用の減少など一時的な要因によるもので、本業である貸し出しによる利益は、リーマン・ショック前の07年度に比べて1割減った
金融市場では、「再編は早く動いたほうが有利な条件で勧められるケースが多いので、地銀再編も一つ動き出すと、拡大していく」(SMBC日興証券の国分希氏)との指摘もあり、地銀が今回の報告書を踏まえて、どう動き出すのかが注目される。
3メガバンクに人事で注文
報告書では、3メガバンクに対して「複数の金融機関の合併を経験してきた歴史の中で、適材適所の人事が行われることが重要だ」と指摘した。合併前の銀行出身者が交互に幹部に就く「たすきがけ人事」を念頭に、改善を促した。
また、銀行窓口での投資信託販売に関連して、2003年3月末から10年間、2年ごとに最も人気の投信に乗り換えた場合、資産が3%目減りしたという試算を示した。銀行に支払う手数料が原因だ。報告書は、手数料収入のために顧客に短期の乗り換えを勧める営業手法の見直しを求めた。
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