こんにちは北区王子の税理士松村憲です。
相続での遺産分割をめぐるトラブルを避けようと、遺言を「公正証書」という公文書の形にして残す人が増えている。
2013年に作成された公正証書遺言は9万6020通と過去最高。専門家である公証人の助言を受けて作るため、自筆で書く場合と違い、法的な不備を心配する必要がない。15年からの相続増税を控え、正確な遺言の作成を勧める税理士も多く、公正証書を選ぶ人はさらに増えそうだ。
「自宅の相続が心配だったけれど、これで安心した」。横浜市に住む小柳スミさん(83)は昨年、老人ホームで暮らす夫(85)に公正証書遺言を作ってもらった。夫は外出が難しいため、法務大臣にに任命された公証人に老人ホームまで来てもらい、本人の意思のもとで公正証書の形にした。
スミさん夫婦は現在、同居中の長女夫婦、離れて暮らす次女の5人で自宅を区分所有している。夫の持分を長女に相続させると、次女に残す財産はない。家族会議を開いて話し合い、次女に納得してもらったうえで遺言にしたという。
日本公証人連合会(東京・千代田)によると、公正証書遺言の作成数は昨年、前年に比べて9%増え、10年前の1.5倍になった。公正証書遺言は公証人が、作成日付や財産内容など、法律で定められた一定の書式を満たすよう指導する。
原本は公証役場に保管するため、紛失リスクも少ない。本人が亡くなった後、財産を引き継ぐ配偶者や子供らが照会すると、原本の写しを受け取れる。遺言の有無や保管役場がわからなくても、全国いずれかの公証役場の窓口に問い合わせれば原則、確認できる。
作成には法廷の手数料がかかり、通常は数万円。本人が病気などで外出できなくても、追加の手数料を払えば公証人に出向いてきてもらえる。税理士や行政書士などから助言を受ける場合は別途、費用がかかる場合がある。
遺言書を残す人は現在、自分の手で書いて押印する「自筆証書遺言」を選ぶケースも多い。ただ、財産や相続割合について表現があいまいだと、相続人同士のもめ事の種になりかねない。
来年から相続税の基礎控除が4割縮小され、都市部の家持ちを中心に、課税が及ぶ範囲が広がる見込み。税額はだれにどの財産を相続させるかによって変わる。節税を考慮して遺産分割の方法を決め、公正証書遺言にしておく人が増えている。
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