こんにちは北区王子の税理士松村憲です。
失言とは、「言ってはいけないことを、不注意で言ってしまうこと」(広辞苑)。間が悪く、何げない言葉が相手を傷つけてしまうケースも多いようです。失言かどうかを決めるのは常に「言われた側」。気軽な冗談のつもりでも、時には許せない言葉に変わる。そのあたりの難しさが浮かんできました。
痛みにふれる言葉
思わず「それ、あるある」と言いたくなるような、軽めの失言から紹介したい。
「保育士ですが、お迎えにいらした白髪頭の男性を見て、今日はおじいちゃんなのね、といいました。翌日、お母さんと話して、お父さんとと判明。平謝りでした」(東京、49歳女性)
「ふっくらしていたので、2人目?、ときいてしまったが、ぽっちゃりしていただけだった」(三重37歳女性)
身体的特徴から、相手の属性や状況を決めつけてしまう「うっかり」の例だ。
一方、うっかりではなく、わざと親しみを込めて言った冗談のつもりでも、相手を傷つけてしまえば立派な失言。
「相撲の水戸泉が優勝した時、出張で水戸にいた。取引先の太った女性につい口がすべって、お兄さん、おめでとう、と言ったら、ビンタされた」(千葉、48歳男性)
笑って済ませる相手ならそれだけの話だが、「失言」認定は常に言われた側が認定する。受け止めた相手には切っ先鋭い刃になり、予想できぬほど事態がこじれることも。
愛知県の女性(73)の半世紀ほど前の思い出。「同僚の女性に、わぁ、きれい!、この写真、本人よりすごく綺麗に写っているね、と何げなく大げさに、褒め称えたつもりでしたが、その後、彼女から絶交状が届きました」
「あなたは何げなく、ふざけただけでしょうが、小さい頃から両親に美しい姉と比べられ、ブスだ、ブスだと言われて育った私には、あなたの言葉や態度が許せない」。そういう内容の手紙だった。
「コンプレックスを抱えていた友人に、申し訳なかったと反省しましたが、その後、以前のようには仲良くなれませんでした」
縁がきれてしまう友人とは異なり、家庭のなかでの発言は、一見、すぐ修復できそうだ。だが、逆にそれだけ不用意な失言が飛び出しやすい、といえるかもしれない。
「複数の男友達と肉体関係をもった我が子に、バイタ、と言ってしまった。嫁いだ今でも、あれは傷ついたと言われる」(埼玉、61歳女性)
「夫が仕事のことなどをグダグダ愚痴っていた時期に、そんなんじゃ、生きている価値ないじゃん、と家事をしながら口から出てしまった」(福島、49歳女性)。妊娠や出産についての話は難しい。一般には人生の慶事。だからよけい、心を痛めた経験を持つ人にはつらい話題となる。誰に過失がなくても友人関係を壊しかねない。
「自分の妊娠を友人に伝える時、つわりがひどくて愚痴っぽく言ってしまった。たまたまその友人が流産してしまった直後だったらしく、知らなかったとはいえ彼女をひどく傷つけてしまった。結局その後、彼女は連絡を拒否し続け、謝る機会も与えてもらえないまま、縁が切れてしまった」(東京、42歳女性)
アンケートでは、失言の経験が「ある、なし」はほぼ半々に割れる。「言った経験がない」と答えた人が選んだ最多の理由は「記憶にないだけかも」。こう考えると、本当に失言と縁ののない人生を送るひとはどれだけいるのか。
ただ、「失言はしない」と認める慎重な人から、「小心者なので自分が誰かに失言をしてしまった経験はない。本音で付き合う関係が少ないせいかと思うとちょっと寂しい」(東京、43歳女性)と言う意見もあった。
あまり気遣いしながら話ていては、人との関係も縮まらないし楽しくもない。会話がそこにある限り失言は付いて回る、と割り切ったほうが気楽なのかもしれない。
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