日本では東日本旅客鉄道(JR東日本)など鉄道事業者が電機品や改札などそれぞれの発注先を決めるのが大半。車両といえども、ひとつの構成部材でしかなく、他の電機品メーカー横並びの状態。だが車両だけを手掛ける「日本式」は海外では通用しない。
特に需要拡大が見込まれる新興国では鉄道事業者が取りまとめ役を選ぶ案件が多い。シーメンスやカナダのボンバルディアなど「ビッグスリー」といわれる世界の大手はシステムや電機品まで手掛け、新興国での受注競争を優位に進める。対抗策が求められるなか、動きだしたのが日立だ。
日立は昨年末、幹線に使う「ETCS」と呼ばれる鉄道信号システムで欧州の認証を取得した。交通システム社の中山洋社長は「これで(世界の大手と)同じ土俵にたった」と安堵した表情で話す。2月には地下鉄や近郊路線などに使う別の信号システムでも同様の認証を取得。異なる種類の信号を扱う世界でも珍しいメーカーとなった。
取得したのは、アジアなど新興国で入札の前提条件となる認証で、「ある種のパスポートのようなもの」(日立)。新興国企業への組み立ての委託を検討するなど、世界展開への準備を進める。得意の車両に、信号、運行管理システムを加え、製品群では世界大手と肩を並べるまでになった。
日本勢が受注を成功させてきたのは、米国や英国など先進国が大半。高い売り上げ目標を達成するには、成長のけん引役となる新興国で存在感を高める必要がある。「拠点や人員はまだ足りないのが事実」(鉄道車両幹部)。今後、思い切った人員の配置やM&A(合併・買収)が選択肢と言えそうだ。
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